降ってくるもの
            渡辺信雄

雨が止んだ 街路樹から
木の実が落ちて 頭を叩かれた。
言葉でない 新鮮な挨拶。
疾走し 激突した。
冷えた体が 熱くなった季節
水びたしのズック靴 破れ
なし崩しに別れ 去った。
私は 紫陽花に屈みこみ
降ってきた 鴬の透明な鳴き声に
心 洗われ 救われる。
木々を伝う 緑の雫 掬い飲む
夢を払い 階段を昇り降り
日常を見つめる。