官民ファンドの「海外交通・都市開発事業支援機構」(JOIN)は今年3月期決算で799億円の損失を計上した。累積赤字は955億円。出資企業は1年以上前から損失を明らかにしていたが、国交省が公表を先送りにした。またJOINの損失のうち179億円はミャンマーの建設事業。ミャンマー市民に対する残虐行為を行っている軍事政権を利するとして批判されてきた。
官民ファンドとは、国が出資と政府保障を行うことによって、「民間だけで担うことが難しいリスクを取り、民間投資を喚起する」とする第2次安倍政権の成長戦略の柱だった。しかし当初から複数の官民ファンドの機能・役割の重複による非効率性、組織・事業のガバナンスの不十分性などが指摘されていた。
例えば吉本興業やNTTなどが共同出資者に名を連ねた、アジア向けの教育配信事業「ラフ・アンド・ピース・マザー」は4年間、アジアに一回の配信も行わないまま事業譲渡していた。この実態のない事業に国は31億円の支援をしていたのだ。昨年10月31日の参院予算委員会でこの問題を取り上げた立憲民主党の蓮舫議員は、官民ファンドが「政権に近いと言われている企業への補助金になっていないか」と批判した。しかも、そのツケは「国民負担」になるのだ。
政府は6月公表した「新たなクールジャパン戦略」で、現在約5兆円のコンテンツ産業の海外展開規模を33年までに20兆円まで引き上げるとぶち上げた。またぞろ国庫から膨大な資金を垂れ流すつもりだ。かつて鳴り物入りで発足したクールジャパン機構は現在398億円の累積赤字。その反省が全くない「新戦略」は始める前から失敗している。(恭)