
昨年12月、沖縄本島中部で米空軍兵長が16歳未満の少女を車で誘拐し、不同意性交を強制した事件が発覚した。那覇地検が嘉手納基地所属の米兵を、わいせつ目的誘拐と不同意性交の罪で3月27日に起訴していた。5月下旬にも、成人女性に性的な暴行をしようとした在沖米海兵隊員が不同意性交等致傷の疑いで県警に逮捕されていた(地検が同罪で起訴していた)。
伊良波(いらは)純子・沖縄県女性団体連絡協議会会長は、「女性への人権じゅうりんだ」と声を荒らげる。「いつまで被害者がでれば米軍犯罪はなくなるのか。受けた痛みは心の傷として一生残る」「被害者への謝罪や心のケア、本当に有効な再発防止策を求めたい」と訴えた。
マグマが燃え上がる
6月28日、沖縄市で性暴力の根絶を訴える「フラワーデモin KОZA」が開かれ、抗議集会とデモが嘉手納基地第2ゲート、コザゲート通りで行われた。参加者は、「腹の底からマグマが燃え上がるような思いがしている」「卑劣な米兵に、また尊厳が引き裂かれた。基地が集中する中部地区で事件が頻発している。黙っていることはできない」「怒りは米軍にだけではない。半年間も事件を県民に知らせなかった日本政府、県警にも」「慰霊の日の2日後に、ニュースを知った。今も戦争が続いていると思う。一人の母親として、この沖縄でどう子育てをし、どう未来をつくっていくのか。危機感を覚える」「事件を知り、言葉も出ないほど悔しい。沖縄の問題ではなく、日本全体の問題だ。この痛みに気付いてほしい」と、それぞれが声を振り絞った。
デモに参加した「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」の新垣邦雄・事務局長は、今年の「慰霊の日」の岸田首相の基地負担軽減に触れたあいさつに、「この時、事件を知っていたはずだ。それなのに一言も触れず謝ってもいない。首相として女性を守れなかった責任がある」と怒った。
隠ぺい体質が被害生む
オール沖縄会議は28日、沖縄県警に抗議。共同代表の糸数慶子さんが「公表していれば未然に防げた可能性もある。隠蔽体質が新たな事件につながっている」。高里鈴代さんは「12月の事件がわかっていたら、抗議集会を開いた。米兵が事件をためらったかもしれない」と話した。
玉城デニー知事は「言葉にならない。本当に怒り心頭だ」「少女誘拐暴行事件が明るみに出たばかり。非人道的で卑劣な犯罪が再び発覚した。断じて許せない。強い憤りを禁じ得ない」と述べ、日米関係機関の実務者による「防止のためのワーキングチーム」の開催を求める考えを示した。池田竹州(たけくに)副知事も27日、県庁を訪れたエバンス嘉手納基地第18航空団司令官(准将)とドルボ在沖総領事に強く抗議した。エバンス准将は、「遺憾に思う」と述べたが、事件概要や米兵の処分に関する具体的な説明はなく、謝罪の言葉もなかった。総領事は「コメントはない」とだけ語った。
基地の犠牲は続く
一方、林芳正官房長官は27日記者会見で沖縄県に情報を伝えなかった理由について、「公になることで被害者の名誉やプライバシーに甚大な影響を与える」など、「捜査当局の判断に踏まえ、判断した」と述べた。
基地・軍隊を許さない行動する女たちの会は、「1995年から24年までの29年間で米兵による性犯罪は多発している。県警が公表していない事件も多く、23年以降に公表した件数はゼロだった」としている。
米軍と日本政府は、基地の維持を最優先させて、沖縄の人びとの人権を平気で踏みにじっている。その姿勢を改めさせない限り、これからも犠牲者は増え続ける。(高崎)
