
昨年12月、国は沖縄県知事に代わって、大浦湾の軟弱地盤埋め立て工事の「代執行」を、年が明けた1月10日から実施すると公表した。
私たち辺野古ぶるー(カヌーチーム)は、前日の9日、作業ヤード設置のための石材投下現場に向かった。すると正午近く、石材を積み込んだ船が現場に近づいてきた。後ろには汚濁防止の四角の囲いを曳航していた。
防衛局の公表では、石材投下日は10日のはずだった。監視していると、午後1時過ぎ石材投下が始まった。沖縄防衛局による「だまし討ち」だ。海上阻止行動の抗議船やカヌー等を避けるための常套手段である。10日にあわせて有給休暇をとったカヌー仲間もいたが、間に合わなかった。
違法な工事
作業ヤード設置現場までは、沖縄防衛局によって不当に設置されたフロートから数百メートルも離れている。フロートを超えて現場に向かったところで、わずか1馬力のカヌーが作業現場に達することは至難の業である。しかも、我々のカヌーより千倍も強力なエンジンを付けているGB(海保のゴムボート)に、カヌーは次々に拘束されてしまう。拘束されたメンバーは抗議のプラカードを掲げ、カヌーの上に立ち上がったり、拘束されたまま「違法な工事をやめなさい」「海が泣いているよ」「石材を投下しないで」と、石材投下船の作業員に向け声をかぎりに訴えた。
汚れたまま石材を投下
投入する石材は「汚濁防止のために事前に洗浄する」こととされていたが、投下された石材からは砂煙が上り、周辺の海域は白く濁っていた。十分に洗浄されている石材ではなかった。
その後、拘束されたカヌーメンバーは次々にGB(我々は海保タクシーと呼んでいる)に移された。フロート開口部まで30分近くかけ、ゆっくりと移送され、激しく大波がうねる海原で解放された。抗議船とカヌーによる抗議活動は、いまも粘り強く続けられている。
もう一つの抗議活動は、大浦湾に生息する貴重な青サンゴやテーブルサンゴの大群落の「移設作業」にたいする監視行動である。サンゴは数百年かけてその場所に根付いたもので、それを人工的に移植すれば生態系が破壊され、生存率は10%以下だともいわれる。2018年に移植された希少種「オキナワハマサンゴ」は、過半数が死滅した。
この時期から、私たちは移植作業の監視から「移植そのものの阻止」に転換した。サンゴを移植するのは専門の潜水夫が担当している。彼らへの直接の抗議活動は危険が伴うので難しい。彼らが作業している現場近くにカヌーで近づくと、潜水夫たちは作業を中断し、船に上がって談笑しながら待機する。当初は効果的な阻止行動であったが、やがてGBがカヌーの接近を規制し始めた。この海域はフロートで囲われておらず、規制範囲が明確に指定されているわけでもないのに、海保による恣意的な判断で拘束されるようになった。
それでも、カヌーメンバーの何人かが海に潜ってサンゴ移植現場をカメラで撮影した。この移植作業も完結するまでには数年以上かかる。海洋生物の専門家はサンゴ移植の難しさを指摘している。21年10月に辺野古の海中で移植現場を視察した大久保奈弥(おおくぼ・なみ)・東京経済大准教授は、作業する人のサンゴの扱いを見て「単なる物を扱っているようにしか思えない」と批判した。(住田一郎)
