
岸田政権は「総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議」を開催し、当面の「特定利用空港・港湾」を指定した(4月)。記者発表によると、「自衛隊・海上保安庁の能力を最大限に発揮するために、平素から訓練を行う必要があり、5カ所の空港と11カ所の港湾を特定利用空港と港湾とし、運用や整備方針の24年度予算額を確認した」という。
インフラ予算は5空港で193億円、11港湾で168億円。「特定利用空港」は那覇、宮崎、長崎、福江(長崎県五島市)、北九州、「特定利用港湾」は石垣、博多、高知、須崎、宿毛湾、高松、室蘭、釧路、留萌、苫小牧、石狩湾新港だ。
実施にあたって防衛省、国土交通省、海上保安庁、空港・港湾管理者の4者で円滑な利用に関する確認書を4月1日付で交しており、「自衛隊・海上保安庁と空港・港湾管理者は、緊急性が高い場合(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態を除く)、当該空港・港湾施設を利用する合理的な理由があると認められるときは、…自衛隊・海上保安部が柔軟かつ迅速に施設を利用できるように努める」という。つまり有事以前の段階で、安保法制の「存立危機事態や重要影響事態」を発動し、指定された空港・港湾の軍事利用が可能になる。
特定利用港湾については、昨年末、全国港湾労働組合連合会と全日本港湾運輸労働組合同盟が連名で、国交省に対し「商港の軍事基地化を図らぬよう防衛省に働きかけること」を申し入れた。港湾運送事業者で構成する日本港運協会に対しても、「港湾の軍事基地化・兵站基地化に反対の表明をすること。同主旨を港湾管理者に申し入れること」を要請した。全国港湾労働組合連合会は傘下の単組に対し、「政府の意図する整備事業に応じない」ことを港湾管理者に申し入れるよう指示している。指定箇所が沖縄、九州、北海道に集中していることから(地図上)、災害対応ではなく、対ロシア、対朝鮮、対中国を想定した戦争準備であることは明らかだ。
政府は空港法、港湾法の「基本方針」の変更を計画しており、今後指定箇所を増やすことを目指している。空港は国管理が多いが、港湾は、かつて国が戦争に利用した反省から、戦後はすべて自治体管理となっている。港湾関係の労働組合や市民団体と連携して戦争準備の動きに反対しなければならない。(高崎)
