森絵都・作/吉田尚令・絵 岩崎書店 1650円+税

「とめよう! 原発依存社会への暴走」大集会(6月9日、うつぼ公園)で、「飢えた牛」の写真などを並べて展示している方がいた。それがこの絵本の「牛飼い」吉沢正巳さんだった。絵本や本を販売して牛の飼料代に当てていると話しておられた。
絵本の帯に「売れない牛を生かしつづける。意味がないかな。バカみたいかな。いっぱい考えたよ」とある。福島県浪江町の「希望の牧場」は福島第一原発から14キロのところにある。事故の時、330頭だった牛が、今は360頭に増えた。近くの牧場主から頼まれたり迷子になった牛を引き取ったりして育てているからだ。
避難指示に抗い、殺処分に抗い、牛に餌をやり続ける。「おれは牛飼いだからな」と吉沢さんはいう。彼の周りにはカンパやボランティアで支えてくれる人たちがいる。「牛を飼う」―それは吉沢さんの闘いだ。(民)
【家畜の殺処分】福島第一原発事故から2カ月後、政府は原発から半径20キロ圏に残された家畜の殺処分を決定した。原発事故前は20キロ圏内で牛3488頭が飼育されていた。