
沖縄防衛局が設置する「環境監視等委員会」は、これまで防衛局側の言い分を追認し、サンゴ移設を批判する専門家の指摘に向き合わずに、国の新基地建設強行にお墨付きを与えるだけの「飾り物」になっている。
辺野古の海は地球の宝
サンゴ礁や藻場が広がり多くの生物がすむ辺野古の海は、沖縄の生物多様性を示す象徴的な場所だ。その破壊行為はSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指す国際世論にも逆行することを国は肝に銘ずべきだ。辺野古の海は、この地球(ほし)に住む人間と生き物たちすべてのものだ。アメリカと日本国家のものではない。まして戦さのための場所ではない。
最近カヌーチームは、港から出港するサンゴ移植船によるフロート内での移植サンゴ採取を阻止するため、数カ所のフロート開口部を封鎖している。炎天下の大浦湾で直射日光を浴びながら、4時間余りフロートに張り付いている。いずれこの方法も海保による規制の対象になるだろう。
7月4日に、沖縄防衛局は大浦湾のA護岸に試験的に鋼管(ウォータージェット併用バイブロハンマー使用/注)を打ち込むと公表した。これも彼らの常套手段の「だまし討ち」。作業は前日3日に始まっており、2本の鋼管はすでに打ち込まれていた。
翌日、A護岸にむかったカヌーチームは、3本目の鋼管打ち込み作業を監視していたが、途中で打ち込み作業がなぜか中止される。後で知ると、鋼管を打ち込む巨大なクレーン台船の固定ロープが「巨大サンゴをひっかけ壊している」と、県からの指摘を受けての中断だった。
大浦湾側の埋立て予定地では、いわゆるマヨネーズ状の軟弱地盤が海面から90メートルの深さにまで達している。90メートルに達する地盤改良工事は世界でも行った例がない。
にもかかわらず防衛省は、軟弱地盤が最も深い「B27」地点の地盤強度を調べないまま設計変更を行い、地盤改良工事を進めている。完成後の崩壊の危険性があるにもかかわらず防衛省に、「B27地点で実測せずとも問題はない」とお墨付きを与えたのが、技術検討会の委員の意見だった。
監視委員に「寄附金」
しかも、委員たちの一部が辺野古関連工事の受注業者から奨学・研究寄附金を受け取っていたことが東京新聞の調査で明らかになっている。その金額は、判明しただけで、2019年9月の委員就任までの5年余りで、3人に計570万円、就任後も2人に計230万円に上っている。
計画どおり順調に進んでも、地盤改良工事だけで12年かかると防衛局は公表している。日米の普天間基地返還合意からすでに約30年が経過しており、少なく見積ってもあと15年も完成まで時間がかかることになる。建設費等も天井知らずに高騰し、当初の見積りを大幅に増額せざるを得ない。国民の税金が湯水のごとく使われる。
しかも、アメリカ軍関係者は、「辺野古新基地は普天間基地の代替にはならない」と言う。特に、滑走路が普天間の2500mに対し、辺野古は1800mしかないため「代替」にならないのだ。
自衛隊基地へ転換
米軍の新たな再編計画では、沖縄からグアムへの移転がすでに進んでいる。この時期に、なぜ沖縄に新たな基地が必要なのか。恐らく自衛隊基地への転換が目論まれているのだろう。
「台湾有事」を声高に煽り、沖縄・南西諸島への自衛隊増設、ミサイル基地化と連動する辺野古新基地建設は、新たな戦前回帰に違いない。
木の葉のようにちっぽけなカヌーで抗議し続ける行動は、「決してあきらめない」という沖縄の人びとと、私たちの意思表示なのだ。(住田一郎)
(注)バイブロハンマー 振動杭打機で杭や鋼板に振動を伝達し先端の抵抗を低減させ、打ち込みする工法。
