旧優生保護法のもとで不妊手術を強制されたのは憲法違反であるとして、国に損害賠償を求めた裁判で最高裁判所は7月3日、原告の訴えを全面的に認める判決を下した。15人の裁判官全員一致の勝利判決だった。
判決では原告たちにたいする強制不妊手術は、憲法第13条(自己の意志に反して身体への侵襲を受けない自由)と同14条(法の下の平等)に違反するとして、「国を免責することは著しく正義・公平の理念に反する」と断じた。

最悪の人権侵害

本人の意思を無視して、強制的に人の生殖能力を奪うなどという、これ以上ない人権侵害にたいして、裁判の中で国は一貫して憲法違反であることを認めてこなかった。最高裁は「48年間の長きにわたり、国家の政策として特定の疾病や障害を持つ人らを差別し、不妊手術を積極的に推進し、その結果少なくとも2万5000人が生殖能力を失う重大な被害が生じた」と国の責任を厳しく追及した。

「除斥期間」適用せず

また不法行為から20年を経過すると損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」が、これまで原告の前に立ちはだかり、幾多の敗訴をもたらしてきた。最高裁判決は国が主張する除斥期間の適用は「著しく正義・公平の理念に反し、権利の濫用にあたる」として退けた。
そもそも国は1996年に旧優生保護法を廃止したときに、被害者にたいして速やかに謝罪と補償措置を行うべきだった。優生施策という国の犯罪を真に反省した上での法廃止であるなら、当然そうなるはずだった。
原告側弁護団は「優生手術の対象者は断種されて当然、という考え方が法律や国の施策で社会に浸透し根を張った」と主張した。半世紀を超えて、被害者たちの救済を遅らせてきたのは、国の責任であると共に、それを許してきた社会全体の責任である。今回の最高裁判決で切り開かれた地平を守り、優生思想にたいする闘いが現在的なテーマであることを明確にし、あらゆる障がい者差別の撤廃を目指していかなければならない。