7月3日、旧優生保護法のもとで不妊手術を強制された人たちが国を訴えた裁判で最高裁大法廷は、「旧優生保護法は憲法違反」とする初の判断を示した。「国は長期間にわたり障害がある人などを差別し、重大な犠牲を求める施策を実施してきた。責任は極めて重大だ」と指摘し、国に賠償を命じる判決が確定した。
日本の障がい者運動に画期をなす歴史的判決だ。私は神戸市内で地元の障がい者の権利を守るための市民グループに参加しているが、この判決に多くの関係者が励まされている。しかし、被害を受けた人たちの傷ついた体と心は戻らないし、それに費やした長い時間も返ってこない。
それぞれの人への謝罪と保障はこれからであり、原爆被爆者や水俣病患者の保障が難航してきた歴史をみれば、楽観できない。最高裁判決は、被害者数を「少なくとも2万5千人」としているが、今回の裁判で多くの人が「仮名」を使わざるを得なかった。障がい者の厳しい現実を見れば、被害者全員への謝罪と保障を実現するためには、社会の隅々にまで今回の判決の意義をひろげる必要がある。
治療以外の目的で、本人の同意なく身体を傷つける行為は傷害罪に問われる。しかし、旧優生保護法のもとで、多くの医療・介護労働者が「法律にふまえて」組織ぐるみの差別的傷害を行った。誠実な反省が求められている。全日本民医連は7・3判決への声明を出しているが、日本医師会は一貫して黙殺している。それどころか、『日本医師会雑誌』のデジタル版で「優生保護法指導者講習会」の記事を公開し続けているありさまだ。
これでは何度でも同じことがおきてしまう。私自身、現在「合法」とされていることが、実は障がい者を傷つけていないかどうか、日々の取り組みで問い返しながら活動している。(小柳太郎/神戸市、介護ヘルパー)