
長距離ミサイルを保管するための大型弾薬庫の新設が計画されている陸上自衛隊祝園(ほうその)分屯地(京都府精華町)の地元で、8月25日、「祝園ミサイル弾薬庫問題 夏の大学習会」が行われた。主催は京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク(「ほうそのネット」)。学習会には550人が参加。終了後300人が雨の中、ピースパレードを行った。精華町ではかつてなく大規模な取り組みとなり、関西における反基地運動の盛り上がりを感じさせた。学習会の講師は小西誠さん(軍事評論家、元航空自衛隊員)。
「海洋限定戦争」
元自衛官 小西 誠さん
今年度の予算で、祝園分屯地に火薬庫8棟を新設するための設計と造成費として102億円が計上されている。これは、2022年12月に閣議決定された「安保関連3文書」で策定された弾薬備蓄の方針に基づくものだ。
祝園や敷戸(大分県)など、全国130棟の弾薬庫での増築を発表している。呉市には「多機能複合拠点」をつくる。また沖縄・九州・西日本に「特定重要拠点空港・港湾」を指定し、民間空港・港湾の軍民共有化を決定している。
安保関連3文書では、対中国の本格的なミサイル戦争を発動するための態勢づくりを決めていた。沖縄・南西諸島に投入する陸自兵力を増強し、その機動展開のための輸送力を増強する。さらに戦争を遂行するための継戦能力と抗堪(こうたん)化を進めている。
同時に日米合同司令部を設置し、レゾリュート・ドラゴン(陸自と米海兵隊による離島防衛の共同訓練)やオリエント・シールド(陸自と米陸軍による実動訓練)などの合同演習を繰り返しながら、日米の軍事共同化を進めている。
米国の政治目標は、日本やフィリピンを巻き込んで、米国に取って代わろうとする中国のアジア・太平洋での覇権を阻止することである。米ソ冷戦下の80年代、米国はレーガン政権による大軍拡でソ連を瓦解させた。今度も同じように海洋限定戦争という形の軍拡で、中国共産党政権の瓦解を狙っている。日本ほどではないにしても米国に協調的な政権に変更し、「経済大国」としてのみ中国の存続を許すつもりなのだ。
米・戦略国際問題研究所(CSIS)の図上演習では、1カ月の海洋限定戦争で、日米の死傷者が1万人という数字が出ている。この戦争政策にNOを言えるのは日本である。世界の世論調査で、「国のために戦う」と言っている国民が一番多いのがベトナムで78%。そこから百数十カ国が並んでいるが、日本は13%と世界で一番少ない。国や自衛隊の指導部が戦争準備に躍起になっても、「戦わない」というのが国民の意思だ。それを運動化しよう。
防衛省が説明会を拒否
集会では、ほうそのネット運営委員会・事務局長の大西さんが報告。「防衛省は精華町からの質問にたいして一定程度の回答をしたものの、肝腎なことは防衛上の理由で明らかにせず、住民説明会の要求にたいして開催を拒否している。他の地域と比べて異常だ。住民説明会を求める署名が、本日ようやく5000筆を超えたが、1万筆を目標に集めて防衛省に突きつけよう」と訴えた。(塚本)
