
2024年夏、過酷な猛暑は訪問介護現場にも大きな爪痕を残しました。私の職場では、7月に利用者さん5人が亡くなりました。うち4人は、救急搬送、または体調不良で通院により、そのまま入院となったが戻ることができませんでした。
他の1人は50代で精神疾患がありました。気温が36度になった日の夕方、団地から300メートル先のコンビニでお弁当を買ったあと、自宅に戻り玄関で靴を半分脱いだまま倒れ、翌朝訪問したヘルパーが発見。死亡が確認されました。
ほかにも、体調不良での入院が頻発。私も含め介護スタッフも全力で熱中症予防を試みてきましたが、「電気代がもったいない」とヘルパーが帰ったあとでエアコンを切ってしまう高齢者があとをたちません。現場は「もう無理!」という絶望感に襲われています。
連日35度超えのなか、買物、調理、掃除を汗だくでおこなうスタッフには疲れが見えます。この時期、家事支援の方が、冷房をつけた部屋で行う身体介護より、からだへの負担が大きいのです。屋外作業で効果がある「空調服」のヘルパーバージョンが普及しないのでしょうか。
事業所も大打撃
事業所の経営も大打撃を受けました。私の勤務する事業所では、8月の売上げが1割以上落ちました。介護報酬は「手を動かして、なんぼ」の世界なので、この状況になるとあっという間に事業所収入が削られます。猛暑の中、走り回り、経営的にも追い詰められるのだから、心が折れる経営者が出てきます。私が回っているエリアでも、10月いっぱいで介護保険事業を閉鎖するところが、また一つ。
猛暑は多くの爪痕を残し、訪問介護現場を蝕んでいます。エアコンの効いた部屋でパソコンデスクから動かないでいる厚生労働省官僚にはわからないでしょう。(小柳太郎/介護ヘルパー)
