紅い指
           渡辺信雄

約束はしていなかったのに
畦道に 公園の隅に
密やかに細い指を出した
忘れていなかったのか
ひっそりと
離れて淋しげに
風もないのに
細い炎を揺らめかせ
毒をもつというけれど
そっと包んでやりたかった
あっ 血の色の蜻蛉が
止まった
再会という
言葉 思い出す