
今年2月、伊藤忠商事はイスラエル最大の軍需企業エルビット・システムズとの間で結んでいた「戦略的協力覚書」を終了すると発表した。これは国際司法裁判所がイスラエルに対してジェノサイド(集団殺害)を防ぐ「全ての手段」を講じるよう命じた暫定措置命令後、初のBDS(ボイコット、投資引上げ、制裁)の成功例となった。有志の学生や在日パレスチナ人とともにこの取り組みの大きな力となった武器取引反対ネットワークの杉原浩司さんが、大阪市内で講演した(9月22日)。
軍需産業強化法
昨年6月、武器輸出や軍需企業の設備増強に税金を投入する軍需産業強化法が成立した。杉原さんは参議院外交防衛委員会(外防委)の参考人として意見陳述を行った。そこで「公然と殺傷能力のある武器輸出に踏み込むことは、大きな政治的意味を持つ。それは『平和国家』から『死の商人国家』への堕落である」と述べたことに、自民の松川るい委員が反発。
松川氏は「死の商人というレッテル貼りによって防衛産業で働く人びとが後ろ指を指されるようなことがあってはならない」と発言。これに対して杉原さんは「防衛産業で働く人びとに後ろ指を指されるようなことをさせているのは、政府与党である」と再反論した。
しかし法案は立憲民主党も賛成に回り成立へ。12月には政府が防衛装備移転3原則の運用指針を改定し、日本でライセンス生産しているミサイル・火砲・弾薬・機関銃などの完成品をライセンス元国に輸出できるようにした。そして今年7月28日、航空自衛隊が保有する地対空ミサイル・パトリオットを米軍に売却する契約を締結したと発表、ついに殺傷能力のある兵器を輸出することに。
市民運動の課題
杉原さんは、立憲民主党が経済安保法、軍需産業強化法など重大な悪法に賛成し続けていることに注意を喚起し、市民運動が「第二自民党」化しつつある立民としっかり対峙しなければならないと強調した。 (香月)
