座り込みの市民を排除する機動隊員=2016年10月8日、沖縄県東村高江

本土から機動隊500人

2016年10月、東村高江の米軍ヘリパッド建設現場(N1ゲート前)で、大阪府警の機動隊員がフェンス越しに、建設に反対する市民に対し「土人」と発言した。
7月12日以降、高江に派遣された5府県からの約500人の機動隊員は、阻止行動の市民を排除するために配置されていた。
工事車両の入構を阻止するため、市民たちは、車を斜めに路上駐車したり、N1ゲート前に数百人で座り込んだりしていた。小柄な女性は、斜め駐車した車の下に潜り込み、30分間も機材運搬車の通行を止めた。訓練場内では、ヘリパッド建設現場の裏側や横道から神出鬼没に阻止行動を繰り広げる市民に、機動隊員たちは翻弄されていた。さらに内地では経験したことのない暑さと湿気が彼らを悩ませた。

非暴力直接行動

上意下達の組織に属し、「秩序を守る正義」の鎧(よろい)をまとった機動隊員。おまけに「反対行動参加者には日当数万円が出ている」というデマ宣伝を信じていた彼らには、国・防衛省の決定事項に反対する「市民の非暴力直接行動」はまったく理解の範囲を超えたものだった。
当時の仲井眞沖縄県知事ですら、沖縄県に対する国による対応を「沖縄差別」と発言していた。
2013年1月、オール沖縄の全41市町村長が政府に辺野古新基地建設断念を求める「建白書」を携えて、東京・銀座をデモ行進した時、沿道から右翼が罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせ、沖縄への差別感情をむき出しにした。これらの状況を考えるなら、機動隊員による「土人」発言を単なる失言と受け流すことはできなかった。
大阪府警を管轄する松井知事は記者会見で、「土人発言」を諫めるのではなく、「一生懸命任務をまっとうしている機動隊員に感謝する」と発言したが、許されるものではない。
国土の0・6%の沖縄県に、いまも70%を超える在日米軍基地が置かれたまま…。米軍基地に所属する米軍人や軍属による、度重なる県民、特に女性への被害が起こっているにもかかわらず、日本国憲法の上位に置かれる「日米地位協定」のもと、多くが「泣き寝入り」させられている現状を「沖縄差別」と言わずしてなんと言えばいいだろうか。

山城博治さんへ弾圧

高江闘争のさなかの2016年10月17日、反対闘争リーダー・山城博治さんが「訓練場内に無断立入り、有刺鉄線を破損した」として現行犯逮捕された。20日には「防衛局職員に対する暴行」で再逮捕。11月29日、キャンプシュワブ・ゲート前での「ブロック積み上げ」が威力業務妨害にあたるとして再逮捕された。後者の「ブロック積み上げ」は、その年の1月のこと。それから10カ月後の逮捕であった。
いずれも微罪にもかかわらず、那覇拘置所から保釈されたのは約5カ月後の17年3月18日。保釈条件として新基地建設反対の現場への立入りが制限された。これは新基地反対闘争の妨害を意図した、政治弾圧としか考えられない。福岡高裁那覇支部は山城さんに懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を出した。
当時の山城さんは、容態を心配して愛媛からきた女医さんが付き添っていたほど満身創痍(そうい)だった。保釈条件の不当性を認めるわけではないが、山城さんが治療に専念できる猶予期間ができたと、内心ではほっとしたのも事実だった。(住田一郎)