
「原発のない社会をめざす」学習会があった(10月6日、神戸市内)。「使用済み核燃料の発生源・原発の全廃を」(木原壯林さん)、「第7次エネルギー基本計画の問題点」(速水二郎さん/元関電職員)が話した。速水さんの講演要旨を紹介する。(竹田)
GXで原発推進へ
3年毎に日本のエネルギー供給や使い方を検討する議論が、この5月から政府の審議会で始まった。世界は「地球沸騰化」と言われる気候危機に対処しようとしているが、日本は温室効果ガス排出量の9割近くがエネルギー由来だ。
この審議会や経産省での議論は産業界が中心で、気候危機防止を訴えている専門家や市民の声はほとんど届いていない。22年には、原発や「脱炭素」新技術を進めるGX(グリーントランスフォーメーション)を打ち出し、原発推進へ大きく舵(かじ)を切った。計画策定には、市民が参加する場がない。国会審議ではなく審議会と閣議決定で決めてしまうやり方は根本的に間違っている。審議会の16人の委員は、ほとんどが原発推進論者だ。民主的で透明な国民的議論を求めたい。
低い脱炭素目標
日本は、脱炭素への視点が弱い。パリ協定遵守を前面化するべきだ。日本の脱炭素目標は「2030年に13年比46%減」と、イギリスの1990年比68%減、ドイツの同65%減と比べてもひどすぎる。エネルギー基本計画の見直しと合わせ、2030年の温室効果ガス削減目標を、1・5℃目標に。CОP28合意に整合させ、先進国として水準を引き上げることが必要だ。
さらにGX以降、原発推進を「国の責務」に大転換させ、老朽原発の再稼働や新増設、「革新炉」なるものへの資金投入、「原発電力の必要性」などを強調している。原発を優先すれば、再エネ発電の出力が抑制され、その発展にブレーキがかかる。
能登地震の教訓
能登地震では、志賀原発がたまたま運転休止中だったが、あらためて「地震・津波・火山」の日本に原発があってはならないことが明らかになった。地盤ごと動いた能登半島地震は、耐震性はもとより原発施設すべてに損傷が生じる危険も露呈させた。複合災害になれば、避難も退避も不可能なのが日本だ。「使用済み核燃料」の存在も、地震・津波・火山列島の日本では、その危険性は明らか。
「脱炭素」を掲げながら、原発と並んでアンモニア混焼火力を導入しようとしているが、10年以内の実用化には間に合わない。高コスト、環境・社会への悪影響が懸念される化石燃料関連の新技術(水素、アンモニアなど)にのめり込む日本の姿勢は、国際的に「グリーンウォッシュ(みせかけの)環境対策」「課題の先送り」と非難を浴びている。原発優先政策によって、再エネ発電の出力抑制・制御が急増している。経済合理性からいっても限界費用が低い電力源へ優先的に切り替えるべきだ。ドイツでは石炭・天然ガス発電の出力制御に注力し、次に原発、最後に再エネ発電を制御している。
政府に意見を
気候変動対策にとりくむ企業や自治体などのネットワーク「気候変動イニシアティブ(JCI)」は、日本政府に「2035年までに石炭火力廃止。温室効果ガス削減目標を13年比66%以上とする」などを求める書簡を提出した。日本は、あの福島原発事故からも「原発廃止」へ転換できなかった。ドイツなどはできた。東電を潰さずに救済し、背後の金融機関、株主も保護した。資本主義的な考え方によったとしても、国策として道を誤ったのではないか。
誰でも意見を出せる「エネルギー基本計画・意見箱」(写真上)があり、ひとことでも2、3行でも、ぜひ投稿してほしい。
「意見箱」のURL
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/opinion/2024.html
