
11月3日、大阪市内で開かれた憲法集会(「輝け憲法! 平和といのちと人権を」)で、憲法学者の清水雅彦さん(日本体育大学教授)が講演した。話を聞いて、今までの思い違いもはっきりした。
「法治主義」と「法の支配」の違いだ。「悪法も法なり」という言葉があるが、戦前のドイツや日本など、法の内容に関係なく、法は守るべきものというのが「法治主義」。
それに対して、「法は正義にかなっていなければならない。悪法は無効にすべき。時に破るべき」というのが「法の支配」。今まで私は「法治主義」も「法の支配」も同じものだと思っていたが、本質的な違いがあることがよく分かった。これからは、「悪法も法なり」と言われても堂々と反論できると自信がわいた。
もう一つ、ぜひ紹介したい内容がある。日本は違憲審査制(憲法81条)を取っている国だが、残念ながら機能していない。人事権を内閣に握られている最高裁はなかなか違憲判決をださない。この10月に衆議院選挙があったが、最高裁判所裁判官の国民審査で「×」をつけた人は、増えたとはいえ1割程度だった。これでは最高裁に違憲判決を期待できない。自分の1票が最高裁の人事にかかわっているという認識をもって国民審査で「×」をつけよう。
9条をどう考えるか
戦争はしてはいけないが、自衛権行使=事実上の自衛戦争は認める、というのが1928年以降の国際社会の考え方だ。それでは日本国憲法9条をどう解釈するか。侵略戦争は放棄するが、自衛のための戦力保持は許されるとするのか。それとも「自衛戦争」を含む一切の戦争を放棄し、自衛のための戦力保持も許されないとするのか。
清水さんは「9条だけで考えては駄目で、憲法前文も合わせて考えるべき」と話した。前文では「国際平和の希求」を「憲法の目的」としている。石破首相の改憲論は2018年の自衛隊明記案ではなく、2012年改憲案+α(9条2項を削除して自衛隊を国防軍に変える・徴兵制合憲)だ。18年案以上に危険だ。
防衛費がGDP比2%に引き上げられると世界第3位。9条と自衛隊の矛盾は拡大する一方だ。だから「改憲が必要」という理屈だ。しかし、政府は5年間で防衛費43兆円を計上するが、これだけあれば大学授業料無償化1・8兆円、小中給食無償化0・5兆円、健康保険料負担無料化5・2兆円はいますぐにでも実現できる。
これからやるべきこと
講演の最後に清水さんは今後取り組むべき課題を提案した。
【参院選に向けて】
職場・地域で、憲法で保障された権利・自由を行使する。学習会・集会・デモに参加する。組合に入る。「権利のための闘争」など。
【運動体の課題】
学習・宣伝活動、全国各地で本気の「労組と市民と野党の共闘」を作る。
【個人の課題】
自己満足で終わらない。若者に働きかける。自己規制・委縮・忖度をしない。
なかなかできないことだが、そうも言ってはいられないと思った。(池内潤子)
