
石破茂首相は、首相就任前の9月27日、米シンクタンク「ハドソン研究所」に寄稿し、安全保障政策の骨格を示し、ウクライナがロシアに侵攻されたのは北大西洋条約機構(NATO)に加盟していなかったからだとして、「アジア版NATO」の創設を主張した。さらに中国・ロシア・北朝鮮に対抗するためにアジア版NATOで米軍の核兵器を「共有」すべきとし、「非核三原則」の見直しに言及した。
1950年代から米英の核兵器運搬システムが配備されていたドイツでは現在、NATOの枠組みで「核共有」を行っている。ドイツとルクセンブルクの国境近くにあるビューヒェル航空基地に駐留するドイツ空軍第33戦闘爆撃航空団のトーネード戦闘機が核兵器運搬を担う。戦時には米大統領の投下命令と米国の指揮系統を通じた作戦承認を経て、核爆弾を目標地点まで輸送することになっている。戦時下のドイツ軍は「核兵器の自由処分権」を得る。そのため日常的に核爆弾の輸送・投下訓練をおこなっている。国際反核法律家協会のベルント・ハーンフェルト氏は、非核兵器国で核兵器不拡散条約(NPT)締約国ドイツの「核共有」は、NPT第2条(核兵器その他の核爆弾装置又はその管理を直接又は間接に受領しない)の義務違反と指摘する。こうした指摘に、米国は「戦時にはNPTは無効」という立場だ。
日本が米国と「核共有」をすれば、自衛隊基地に配備された米軍の核爆弾を自衛隊機が目標地点まで輸送して投下することになる。戦慄すべき事態である。(香月)
