
40代の女性記者が、労働組合の必要性を痛感して日米の労働組合を追っかけ、労働組合をアップデートする道を探る。仕事で悩む人たちに、知恵やヒントをくれる1冊。Webサイト『朝日新聞GLOBE(https://globe.asahi.com/article/15109384)』の「労働組合の新境地」コーナーを担当する。
<1章>「職場に働きやすさをつくる」。UAゼンセンの会議室。アパレル従業員が客に土下座している動画を見て議論する場面の紹介から始まる。“カスハラ”(カスタマーハラスメント)、パワハラと共に大きな労働問題だ。航空連合が乗客による迷惑行為を違法とする改正航空法の成立で、客室乗務員が理不尽な要求を拒否できるようになった話など、その裏には膨大なアンケート調査、ガイドライン作り、国会議員の働きかけなどの苦労があるという。
<2章>「フリーランス・雇用されない働き方」。ライター、運送業、俳優、美容師など462万人のフリーランスは、労基法などの網がかからず不安定な環境を強いられる。
花形であるアニメ産業の市場は3・4兆円(2023年)と、鉄鋼業・半導体産業に迫る規模にもかかわらず、流通会社が著作権を保有しており、アニメ制作会社の利益率は海外売上の6%(国内売上の16%)と歪んだ産業構造となっており、従事者の37・7%が月収20万円以下、アニメーターの作成動画は1枚130~300円(約1時間)の出来高制である。
今や米国のアニメーション・ギルドのような、交渉力持った産業別労働組合結成の動きや、取引の適正化などのフリーランス新法(24年11月施行)や、共催組合や労災保険制度の動きを紹介する。
<4章>「中小の春闘」。日本の労働者の7割が働き、国内企業の9割占める中小企業では、「地域や職種別の賃金相場の社会的な水準つくりの取り組み」を紹介する。内閣官房と公正取引委員会が、「労務費の適切な価格転換のための価格交渉に関する指針」(23年11月)や、下請け中小企業振興法に基づく「振興基準」の改訂…。これらを武器に企業に運賃値上げ交渉を迫り、賃上げにつなげていく取り組みを紹介する。「2024年問題」に苦闘する、運輸労働者の交渉理屈になり得るかと。
<5章>「『官製春闘』の実態」。小泉時代(20001年)、厚生省と労働省の統合の際、労働省の最大局・労政局(労働組合法所管)がなくなり、労政局の中の労働法制課は労働基準局に、労働組合課は担当参事官たった1人に引き継がれ、労働組合や労使関係を扱うプロの職員採用もなくなったという。
私たちユニオンは労働局に職員を増やす申入れを行っているが、労働局は「中央(厚労省)が拒否回答」と、実に悔しい話だ。
<9章>「働く人の視点を政治に生かすためには」。2000年代に進んだ「規制緩和」で、労働者の権利破壊に反対する労組が「既得権益擁護者」として批判対象になった。維新や政権の宣伝が大きいが、こんな誤った認識を何としてもひっくり返さねば。
<11章>「領域を広げる」。福岡市水道サービス従業員ユニオンが、福岡県知事に対し、2地域の委託業者と結んだ労働協約を市内全域に拡張・適用するように求め、粘り強いたたかいで実現した(23年2月)画期的な取り組みを紹介する。
<15章>「サンダース委員会」。過去50年間で大きな富の再分配が起き、下層の90%から50兆円がトップ富裕層1%にいったと報告。全米自動車産別労組委員長は「Eat The Rich」(金持ちを食いちぎれ)のTシャツを着て、「オルグを死ぬほどやります」とアピールする。労働組合の変革で、労組を支持する人は2009年には48%だったが2022年には71%に盛り返した。
30年間、ユニオンで執行委員として闘ってきたが、知らないこと教えられること満載だった。
(関西合同労働組合、石田)
