
SNSはツールにすぎない
「台湾と韓国の市民社会の実践を参考に、SNSを活用した新しい市民参加を学ぶ」という公開講座が開かれた(「市民と市政をつなぐ会垂水」主催、2月9日/神戸市内)。私も含め、年齢やや高めな十数人が参加した。この市民団体は昨年11月、兵庫県知事選挙で稲村和美候補を勝手連として応援した。
開催の趣旨には、次のように書かれていた。「先の兵庫県知事選は、SNSによる発信が新たな政治参加を生み出しましたが、不確かで扇動的な情報が民主的な議論を阻害しました。従来の市民活動における発信・拡散の壁を超え、SNSを活用した民主的な議論を作り出すために、韓国・台湾の身近な実践事例から学びましょう」。
原発事故、母子避難で台湾、そして韓国へ
講師の女性は福島県出身。2011年に高校を卒業、母子避難で台湾の大学に入学、そのまま台湾で卒業し、その後、韓国の非営利TV局やソウル市の社会イノベーション機構「ソウルイノベーションパーク」で国際連携事業を担当した後、2020年に独立。その過程で台湾、韓国で市民運動をさまざまな形で経験した。
講演とワークショップで、初めから強調されたのは「SNSはツールにすぎない」ということ。あくまでもツール(道具)としてのSNSということだった。彼女は、台湾で生活していた期間に、かのオードリー・タン氏(台湾政府の無任所閣僚の政務委員・デジタル担当)と二度も面会したという。友人も含めたスリーショット写真がスクリーンの映ると、参加者一同びっくり。
「オープンガバメント」
それは、台湾政府が進めている「オープンガバメント」という運動の一つ、「行政の透明性を日々高めていくために、可能な限り行政情報を一般市民にわかりやすく公開する」一環として、市民が予約のうえ、時間を区切ってオードリー・タン氏と面談できる。
私はオードリー・タン氏こそデジタル化推進の権化と思っていたが、実は直接的な市民との対話を誰よりも重視していたということに、強く感動した。まず人と向き合い、そこにある課題を解決するためデジタル化やSNSを活用するということなのだろう。
講演とワークショップで、たくさんの学びのきっかけを得ることができた。正確に内容を理解できたか、どうか、自信がないが、今後の市民・社会運動へのSNS活用を考えるみなさんに、何らかヒントになればとシリーズで投稿してみたい。(小柳太郎)
