トランプの言動にいちいち反応していたらこちらの身が持たないが、1月29日に首都ワシントン近郊で旅客機と軍用ヘリが衝突して69人が死亡した事故にかんするトランプの発言には、はらわたが煮えくり返った。
何かにつけて民主党批判にこじつけるトランプだが、事故原因が未解明の時点で、「事故の背景に連邦航空局(FAA)のダイバーシティ(多様性)を推進する取り組みがあった」と根拠を示さずに一方的に主張した。FAAがDEI(Diversity=多様性、Equity=公平性、Inclusion=包括性)推進のために「重度の知的障害や精神障害を持つ人々の雇用を進めた」ことにあると決めつけ、その中には「四肢欠損、部分的な麻痺、完全な麻痺、てんかん、低身長」などの障害を持つ人々も含まれていたと述べたのだ。FAAは職員の採用は厳格な資格要件に基づいており、トランプの言っていることはまったくのデタラメだ。ところがトランプはそんな事実はおかまいなしで、民主党のバイデン前大統領が任命した前運輸長官が「多様性ポリシーによって運輸省を破壊した」「(FAAが)重度の知的障害や精神障害を持つ人びとの雇用を約束している」と続けたのである。
こんな発言がテレビで繰り返し放送されることによって、どれだけ多くの障害者が傷ついたことだろう。
イスラエルを援助し、ガザ住民の虐殺に加担したバイデン政権にはいささかの幻想ももってはいないが、少なくともバイデン政権の下ではDEIの取り組みが進められ、社会的・性的・民族的マイノリティに対する格差を是正する措置がとられてきた。トランプは大統領就任の初日に、大統領令でその取り組みをバッサリと切り捨て、終了させたのだ。
「アメリカには男性と女性しかいない」と性的マイノリティの存在を抹殺する発言を全世界に向けて発したが、これには「性であれ、障害であれ、いろいろあって何が悪い!」と真っ向から反論したい。
すでに米国内の「不法移民」を軍用機で故国に送還したり、悪名高きキューバのグァンタナモ米軍基地に収容するよう指示したりと、トランプのやっていることは人権無視も甚だしい。トランプは自分の先祖がドイツからの移民だったことを忘れたのか。
これからの4年間に何が起こるのか。なんでも米国に右にならえの自民党政権の下で、性暴力への対処が再び緩くなり、女性やマイノリティへの権利保障の剥奪が企てられるのではと危惧する。こんな歴史を逆行させるようなことを許すまい。声を上げよう! (想田ひろこ)