大浦湾に浮かぶ作業船

新基地建設と関連工事、「代執行」で強行
かつて、国道329号線に沿って車を走らせると、キャンプ・シュワブのゲート前から先は道の両側とも緑濃い山原の森だった。イタジイやモクマオウ、ギンネムが生い茂り、所々にアカバナも咲いていた。
今その景色はない。木々は伐採され、赤土がむき出しになっている。新基地建設地に伴い、美謝川の付け替え工事が急ピッチで推し進められている。さらに昨年、新たな工事用ゲートが、以前の場所から1・5キロほど名護市内寄りに移転された。そのため、さらに膨大な樹木が切り払われた。太陽雨(ティーダアミ)が降ったあと、アオスジアゲハがよく水を吸いにやってきた、あの森は消えてしまった。伐採後の赤茶けた山肌を見ると、胸が張り裂けるようだ。 

10年を越える海上抗議行動
一方、海側の大浦湾には、20艇もの巨大な工事関連船舶がびっしりと停泊している。昨年1月10日に、沖縄防衛局の工事変更申請への県の「不承認」に対する国による「代執行」が強行された。今年1月10日には、大浦湾での工事はわずか作業船3艇が作業ヤード・鋼管杭うち・砂杭うちの準備を行っていたにすぎなかった。その後、2カ月足らずで、大浦湾は超大型作業船で埋め尽くされている。 
海上抗議行動は、すでに10年を超える。抗議船と台車の傷みがひどくなってきたが、修理もままならない。カヌーでの抗議活動も、大きく制約されている。以前なら工事現場が比較的近かったので、フロート越えの抗議活動も効果が大きかった。しかし、いま行われている作業ヤードや鋼管杭うち現場は、フロートから遠く離れており声を届けるのも難しい。それでも辺野古ぶるーは、フロートを越え、果敢に作業船に向かっていく。
カヌーの千倍もの馬力のGB(海保のゴムボート)とは、比較にならない。すぐさま拘束されてしまう。しかし、拘束されてからが勝負だ。カヌーの上に立ってプラカードを掲げる者、あるいは「工事をやめなさい!」「サンゴや海が泣いているよ」と、大声で作業船に向かって抗議の声を上げつづける者。なかには拘束した海保隊員に、「作業船に近づいてほしい、カヌーの向きを変えてほしい、作業員に声をかけたいから」と依頼する者もいる。すぐに拘束されても、できることをする。抗議活動をやめるわけにはいかない。 

全国から座り込み抗議、3900日
沖縄防衛局自体が、新基地建設に展望を持っているわけではない。土砂をどこから調達し運び込めるのか。90メートルもの深さにあるマヨネーズ状地盤を、どう改良できるのか、湯水のごとく使われている工事費用の増加など、困難な課題は山積している。 
工事用ゲート前での座り込み抗議は、もうすぐ3900日を迎える。昨日は、北海道から6人がゲート前に来られた。「辺野古での反対行動の状況を日々追いながら、いてもたってもいられず、やっとゲート前阻止行動に参加できた」と語ってくれた。4月からジャーナリストとして働くという大学生たちも、やって来た。阻止行動に参加しつつ、座り込み参加者にインタビューを行なっていた。
伊豆半島西部の小さな町から、足が少し不自由な高齢の女性が1人で来られていた。辺野古を訪れる人々は途切れることはない。阻止行動に参加するために沖縄に移住して来た人も多い。国内からだけではない。韓国、アメリカなどからも、辺野古への連帯に来てくれている。辺野古の新基地阻止行動は、決して孤立した闘いではない。 
県民投票で70%を超え反対した民意、翁長、玉城二代にわたる沖縄県知事の反対を一顧だにせず強行される「国策」と「国家による暴力」の爪痕が、あのむき出しの赤土だ。(住田一郎)  
*写真/大浦湾に浮かぶ作業船(SCP砂杭うち船)