
「核兵器積載艦艇の神戸港入港拒否に関する決議(非核神戸方式)」を、神戸市議会が全会一致で可決(1975年3月18日)し、成立してから50年になる。以来、外国艦船は「核を積載していない」という非核証明書を神戸市に提出しないと、入港できない。
神戸港に入港を求める外国艦船が神戸市に入港を連絡すると、神戸市は「核を積んでいない」証明書の提出を求める。提出されると「着岸バースを指定する」手続きが行われ、入港できる。
フランス、イタリア、インドなどの艦船が証明書を提出し入港したことがあるが、米海軍は「積んでいる、積んでいない」を明らかにしないため提出しない。結果、戦後占領期以降も第6突堤(米軍専用6突)に入港してきた米艦船は、1隻も入港できなくなった。
2001年8月、これを突き崩そうと米軍はミサイル巡洋艦ビンセンスの入港を求め、大使館や領事館からも市、市議会、港湾労組などへ「圧力」をかけてきた。市民や市民運動は、ポートターミナルなどの岸壁で反対集会やデモを展開した。ビンセンスは入港を断念し、県が管理する姫路港へ入ることになったが、抗議行動は姫路港でも行われた。

非核条例を考える全国の集い
50周年の3月、「非核神戸方式を今こそ全国へ~非核条例を考える集い」が開かれ、浜恵介さん(立教大講師)、新倉裕史さん(ヨコスカ平和船団)、粟原富夫さん(神戸市議)ほかから、神戸方式の経緯や意義、今後などを考える報告があった(3月15日、神戸市内)。
非核神戸方式は70年代、米軍埠頭(6突)の返還要求や反基地闘争の高まり、全国的に革新首長が誕生し、神戸市では社会党系の革新市長が続いていたなか、自民党も相乗りし「全会一致」成立した。国会で質疑も行われ、「地方自治の本旨に基づき行っている。中央政府がとやかく言うべきでない」(84年、中曽根首相)。「国の外交事務の処理が、地方公共団体によって妨げられることはあってはならない」(87年、外務省)(99年、小渕首相)などと答弁、対応があった。
直後に米掃海艦が入港を画策
ところが、米掃海艦「ウォーリア」が3月24日に入港を予定していることがわかった(19日、神戸新聞ほか)。17日に神戸市に入港届が出され、市は「非核神戸方式を説明し、理解を得た」とした。21日現在、非核証明書は提出されていない。「証明書提出なしに、理解を得た」などと入港させることがあってはならない。
「非核神戸方式50年」の3月に入港を求めること自体が「非核神戸方式を崩そう」という意図が明白であり、しかも「50周年集会」が開かれた直後である。許しがたい。21日、全港湾関西地本、自治労兵庫県本部、平和のための市民行動ほかが、神戸市に抗議を申し入れた。
高知、北海道や沖縄も
99年には、橋本大二郎・高知県知事(当時)が「非核神戸方式条例」による港湾条例を提起したが、自民党の反対により断念した。北海道函館市で「非核・平和函館市民条例の制定を求める署名(2万5千筆)」が提出され「継続審議」に(2002年、2票差で否決)。苫小牧市では、市民が市議選候補者に「非核平和条例の制定」アンケートを示し、8割の賛同を得た(2002年)。それを受け、市長が制定の意向を表明し、非核平和都市条例が制定された。子どもたちに伝えるため、やさしく解説した副読本も作られた。
沖縄県石垣市は条例を模索しながら、「石垣市平和港湾宣言」を決議している。宣言には「わが国は唯一の核被爆国として、また平和憲法の精神からも、国内唯一の地上戦で悲惨を極めた沖縄戦の悲劇を絶対に繰り返させてはならない。石垣港は、わが国の南の玄関として地域経済の振興、市民の生活安定に重要な役割を果たしてきた。平和のもとで諸活動が保障されてきたからに他ならない」と謳っている。2008年、市長の反対を無視し米軍艦艇が石垣港に入港した。その後、右派系の市長が当選している。南西諸島への自衛隊配備も強行されてきた。
港を戦争に使わせない
90年代後半からは、新安保ガイドラインや周辺事態法などが実施され、2014年、15年には安倍政権により「(米軍と一体に)集団的自衛権行使」「安保関連法」が成立させられた。集会では非核神戸方式を「どのように広げられるか」など、報告や議論が行われた。「非核証明の提出は求めないが、外務省と当該国在外公館に核兵器搭載の有無を照会する」という“準非核神戸方式”も検討されているようだが、「港湾軍事使用に一定のブレーキをかける」「非核神戸方式を骨抜きにしている」など積極的、消極的と評価が分かれている。神戸市は、「市議会の決議を尊重し資料提出を求めている。法的には何の拘束力もないのではないかと認識(市の姿勢)」しているとも言っている。
非核神戸方式の背景には港湾法の存在があることが見逃せない。「港湾法は、戦後の民主法の第1号と言われている。戦前、重要港湾は国が管理し軍港や出兵に使われ、侵略戦争への出撃拠点になった。その反省から、重要港湾はそれぞれ地方自治体が管理し、国家利用されることを排除すると明確に謳っている。自治体、住民に管理権がある。神戸方式は、この港湾管理権を最大限に活用している」(粟原富夫・市議の寄稿/『未来への協働』2003年3月)。
「市民の運動が非核神戸方式を守らせている」という認識を新たに、「発足50年」を機に全国へ粘り強く発信し、拡げていくことが求められる。(博)*集会資料等を参照しました。
