
入院した病院は、先に保証金を病院に預け退院時に清算するシステムでした。私は1割負担ですから、検査入院のときは17000円ほど、手術の時は34000円ほどでした。高額療養費の申請も病院がしてくれるので便利でした。
それにしても1円も持たずに大丈夫かと思われるでしょう? 検査入院の時は、自販機でコーヒーを買うぐらいはと小銭を持って行ったのですが、お茶は1日3回配給があり、入院期間は短いし、全然必要ありませんでした。
自民党が高額療養費の上限額を8月に引き上げようとしましたが、とんでもないことですね。癌患者団体の反対もあり、見送ったようです。石破首相は、秋までに改めて方針を検討し、決めるとしています。癌にかかわらず長期療養が必要な患者の意見も、ぜひ聞いてもらいたいと思います。
家に帰ることもリハビリ
一般病棟に移った次の日、3月1日に看護師さんから「座る練習をしましょうか」と言われました。まだ身体中にドレーンやチューブ、バイタルを図る線とかが付いている状態です。なにより、傷が痛い。「ほんとは、手術の次の日からやってもらうのですけど、もう3日目になりますから早いほど傷の治りがよいですよ」と言われ、痛み止めを飲んで練習することになりました。
薬を飲んでから30分ほどして看護師さんが見守る中、ベッドの端に腰をかける練習をしました。まずベッドの頭を最大限に起こし、それによりかかった状態で手すりを掴み、両足を床に下します。それから手すりを掴んでムグーッと体を起こします。痛みをこらえながら、なんとか座れました。
起ちあがって歩く
すると「立ちあがって歩いてみましょうか」と、サラッと言われました。「えー、全然そんな気がしないんですけど…」と私。「でも、運動しないと腸が癒着したりしたら大変ですよ」と看護師さん。覚悟を決めて立ちあがってみると、ズーンと下腹に痛みがあるものの座るときよりは痛みがましでした。ちょっと歩いて見ようかなという気になり、その日は病室を出て3メートルくらい先の角まで歩きました。
3月2日。やっと食事を完食できるようになりました。それまでは傷の痛みでベッドの頭を起こしてよりかかっていても、姿勢を保つのが大変で疲れてしまい、食欲がなくなって半分くらい残していました。
この日はドレーンも抜けて動きやすくなり、1日、1日、傷の痛みが軽減するとともに寝起きもしやすくなり、歩行距離も延びました。「日にち薬」とはよく言ったものです。
腹筋は大事ですね
この入院で感じたことは、お腹に傷があると起きあがれない、座って姿勢を保つことができない。腰をかがめることができないのでズボンも履けないし、靴下も履けないということです。腹筋は大事です。
さて3月5日に退院が決まりました。退院した日は、レトルトカレーと冷凍チャーハンで食事を済ませました。家に食べ物がないので、翌日は息子に付き添ってもらってスーパーに買い物に行きました。自転車を押して歩いて行ったのですが、スーパー前で自転車を止めるとき傷口に響きました。
こういう動作も腹筋を使っているんだと思いました。荷物が多いとスタンドを立てるとき傷口が痛いので買い過ぎに注意しつつ、3月8日には自転車にも乗れるようになりました。担当医が言った「家に帰るのもリハビリ」というのは、こういうことだったんですね。傷の痛みが完全に消えるまであと少し…。そうしたら、電車に乗って皆さんに会いに行けますよ。(おわり)(民)
