
私は2001年8月に沖縄・名護に移住したので大田昌彦知事時代(1990〜98年)を知りませんでした。03年3月に始まったイラク戦争をきっかけに初めて在沖米軍の加害性を知り、沖縄の近現代史を学びました。そして日米両政府の沖縄への差別構造の理不尽さが許せないと、辺野古新基地建設反対現場に通い続けました。その間に2014年12月に翁長さんが知事に当選したのですが、この映画は翁長さんが亡くなる18年8月までの記録です。
私は、今でも一番尊敬できる政治家は翁長雄志さんと答えます。なので、この映画は見逃せませんでした(3月22日、那覇市桜坂劇場で先行公開)。驚いたのは、大田知事時代に、翁長県議(当時)は大田さんの県政をことごとく攻撃していたとのこと。ところが翁長さんが知事になり、日米政府と対峙し、県外国民からあからさまな沖縄差別を体験したことで大田さんの姿勢を理解し、気がついたら自身も大田さんと同じようなことを発言していたということです。
お二人の共通点は、「沖縄戦と米軍統治下における惨状と差別を未来に続けさせてはならないと」いう信念。日本に復帰してからも、なお、米軍基地機能を沖縄に意図的に集中させ、現在は自衛隊も米軍の指令で攻撃ができるように沖縄周辺も含め南西諸島での強化が進んでいます。
辺野古新基地建設は確かに進められています。でも民衆の力で遅らせているのも事実です。その力は尽きることはないと確信しています。その理由は、この映画を見ていただければわかると思います。
私が毎月発行している『カナサ通信』の題字横に毎回書いているメッセージ、『地元の誇りを未来の豊かさにつなげよう』は、故翁長知事が使っていた『誇りある豊かさ』を継承するためです。
どんなことがあろうと日常と未来を犠牲にするような戦争につながるものには抗い、足元にある自然や回りの人たちを大事にし、文化や習慣を楽しんでいける生活を守っていきたいと思います。
(篠原孝子/自然食品の店「カナサ」オーナー、名護市)
