杭打ち船と海保の警備GB

2025年4月25日。沖縄防衛局が護岸工事に着手し、大浦湾に最初の土砂を投入してから8年目を迎えるこの日、「海上大行動」が行われた。集会会場は、大浦湾上に設置された巨大な作業船SCP船(注)を目の前にしたフロート沿いにある。抗議船6隻、カヌー31艇。抗議船に乗った参加者、新聞記者、カメラマンを含め約20数人。60名にも及ぶ大抗議団だった。始まる前に、カヌーメンバーは松田ヌ浜から会場までの2・5キロを50分ほど、一人の落伍者もなく自漕で到達し、フロート沿いに様々な横断幕を張り付け、抗議のバナーを掲げた。(注)サンドコンパクション=砂杭を打ち込む作業船。

「海が、サンゴが泣いている」
10時の平和の鐘を合図に、抗議集会が始まった。主催者、各団体の決意表明後、カヌーメンバーのうち5人が辺野古新基地建設阻止の熱い思いを込めアピールした。11時、集会終了と同時にカヌーによる阻止班メンバーはフロートを越えSCP船に向かっていった。カヌー(1馬力)の数百倍ものGB(海保ゴムボート)に全員拘束されたが、拘束されると同時に、メンバーはカヌーから(立ちあがる者も)SCP船に向け大声で「工事をやめなさい」「違法な工事だよ」「海が泣いてる」「サンゴが泣いてるよ」と抗議を続けた。

海底はマヨネーズ状の軟弱地盤
大浦湾にはSPC船6隻、トレミー船、ガット船、鋼管杭うち作業船、作業ヤード建設の作業船、タグボートなどがひしめき合っている。これまでの新基地建設の進捗状況は、比較的に浅瀬の辺野古側の埋め立てが、ほぼ終了している。それでも全工程の20%にも届いていない。あまりにも杜撰な設計変更に対し「ノー」とした沖縄県の見解を無視し、国が「代執行」して1年3カ月、大浦湾の建設予定地には水深90メートルにマヨネーズ状軟弱地盤が確認されている。にもかかわらず国は一方的に、科学的な根拠を示すことなく「70メートルで十分」と工事を強行している。国は、完成まで12年、費用は9300億円と言っていたが、すでにその予算80%は執行済みである。沖縄県は完成までに約2兆3000億円が必要になる試算している。

ゲート前座り込み4000日
工事用ゲート前での座り込み、阻止行動は粘り強く続けられ、まもなく4000日に達する。海上大抗議が行われた2日前、ニュージーランドから、先住民のマオリ一家と友人が座り込みに参加していた。彼女たちの一人は、「私はニュージーランドの先住民であり、日本の先住民である琉球人のたたかいに連帯するために来ました」と語った。

問われる「植民者」ヤマト
故・翁長知事が国連で報告した、琉球人としての誇りをもってウチナー口を使用したことに、反発が沖縄から起こったと聞く。薩摩が琉球王国を17世紀に侵略し、その後、明治政府が武力をもって「琉球処分」を行ない、沖縄を植民地化したことは歴史的事実だ。「先住民」という表現への反発には、「先住民は劣っている」という裡なる「偏見」がある。植民者ヤマトからのまなざしにさらされ、「偏見」を内面化してきた複雑な歴史があるとはいえ、それを沖縄自身が打ち砕くことなくして、今もまだ沖縄を「植民地」として収奪と暴力を継続しているヤマトと日本政府に向き合うことは難しい。しかし、それ以上に問われるのは「植民者」ヤマト自身だ。
戦後80年を経て防衛大臣の中谷は、第32軍の牛島司令官辞世の言葉を「平和への希求だった」と讃える。日本本土への攻撃を遅らせる「捨て石」として、沖縄県民の多くの命を奪ったのだ。中谷の「讃辞」は、まさに「植民者」の傲慢さと、鈍感さに満ちている。マオリやハワイ先住民は、真の自立に向けた闘いを今も続けている。
沖縄は、「平和の希求」のみならず、「脱植民地」への道をヤマトへ問いかけている。(住田一郎)(つづく)