渡辺 信雄

花のまわりで
この世の悲惨な出来事の
外へ ひとひら ひとひら

散っていった桜
雪柳が風に 揺れ
しなやかな いくつもの指が
疲れた私の体に触れる

いく度かの春が めぐり
君の黒髪は シルバーに
新芽は芽吹き つくしが顔を出す
花たちに エネルギーをもらう

紫モクレンが 天を向いて
舌を 出している (四月)