「不当判決」を弾劾する!
耕作権裁判判決の日、傍聴券を求め千葉地裁法廷を取り巻く行列が、折り返す長さに延びていた(3月24日)。開廷し、傍聴席は満席だったが、原告席に空港会社代理人、関係者の姿はない。裁判所が「空港会社に不利な判断をするはずがない」と、たかをくくっているのか。
案の定、冒頭の「主文1」で示されたのは、空港会社の要求そのままに、「南台の農地を明け渡せ」との結論。不当判決だ。裁判所は19年もかけ何を審理したのか。
判決理由の説明、傍聴席から飛び交う抗議の怒号で何を言っているのか、よく聞き取れない。しかも、朗読する齋藤裁判長はとっとと終わらせたいと早口、かろうじて分かったのは、「(市東さんの)有機農業の社会的意義や有用性」と、それが「土壌改良など長期に及ぶ積み重ねの結果であり、代替地が確保されたからと言って直ちに再開できるものではない」と認めたこと。このあとに「しかしながら」と続く。
言い渡しの最後に、「仮執行宣言は付さない」とした。理由は、「被告らが長年にわたり南台41番1の土地等において農業を営んできた」からだ、と言う。ならば、なぜ空港会社による農地取り上げを認めるのか。形式論理としても整合性がない。5分30秒の言い渡しを終え、逃げるように立ち去る裁判官の背に、「不当判決を弾劾するぞ!」「許さないぞ!」のコールが叩きつけられた。廷吏も、怒りの凄まじさに立ち尽くすばかりだった。

空港会社救う「ウルトラC」
その後、弁護士会館での報告集会。「判決は予想したとおり。ますます闘志が湧いてきた。これからも南台の畑で農業を続ける」―市東さんの表情にはいささかの陰りもない。弁護団からは一瀬、遠藤、浅野、長谷川、大口、西村、吉田の各弁護士が判決を厳しく批判した。
とくに強調されたのは、弁護団側が「明け渡しをめぐって争われている農地には、明らかに市東さんの賃借権がある」ことを、客観的な事実を積み重ねて証明し尽くしたにもかかわらず、それを判決ではまったく認定していないこと。
一方で、空港会社がそもそも争点としていない問題まで勝手に持ち出し、市東さんの 賃借権を否定している。旧地主・藤崎との賃借契約について「最初から合意は成立していなかった」「農地の広さだけ決めて場所は特定していない」「空港問題が緊迫するなかで初めて交渉をしたが、そんな 状況では交渉が成り立つはずもない」「市東さん側が地代を払っていない期間があるから、時効取得は成立しない」云々。
どれも事実とは無縁、裁判所の主観的判断であり、推論でしかない。文書捏造で、しのがなければならないほど押されつ放し。グラグラだった空港会社を救済するために、ひねり出した裁判所の「ウルトラC」(長谷川弁護士)だ。
大口弁護士は、この手法について「空港建設のために強制的手段を用いない」との公約を、「強制収用ではなく民事執行だからいいんだ」とすり抜けた農地裁判のやり口を踏襲するもの」と断じた。

仮執行宣言、付けられず
仮執行宣言が付かなかった(付けられなかった)のは、裁判所が抱える後ろめたさの裏返しか。これも、ささやかとはいえ裁判闘争が獲得した成果であり、一つの勝利として控訴審に進むステツプになるだろう。
今年3月、山形のコメ農家、菅野芳秀さんたちが起こした「令和の百姓一揆」は、トラクター30台を連ねた都心デモと、全国14カ所の同時の行動で注目を集めた。「成田の百姓一揆」も負けてはいない。
成田・三里塚の地で農を営みながら、国策と空港会社の私利益追求、ゴリ押しをはね返すたたかいは、半世紀を超え、まだまだ続く。(望月)*市東さんの農地取り上げに反対する会/会報『耕す者に権利あり』71号から、要旨を引用させてもらいました。(『未来への協働』編集委員会)