
斎藤後の県政 どのような知事のもとで再生していくか
昨年11月の知事選で自ら候補者を擁立できなかった自民党県議団(県連)は、すでに斎藤辞任後の候補者選考を口にしており、そのめどが立たないと不信任決議には踏み切れないとしている。斎藤辞職要求を突き付けている政党、会派にしても「ポスト斎藤県政を担う候補」の算段ができているわけでない。
昨年11月の知事選に際し、「連帯兵庫みなせん」は10月14日付け「衆院選と知事選へ向けてのアピール」を発表した。知事選に関する概要は以下の通り。
「今回の知事選は、政党支配を脱した県政史上画期的な知事選であること」
兵庫県知事選は、62年間にわたり自治省・総務省出身の知事が続き、選挙に際しては自民党をはじめ多くの政党が推薦し、本来は国政から自立していなければならない地方自治を、国政政党が牛耳る選挙を繰り返してきた。
今回の選挙では共産党を除いて国政政党が推薦する候補者がなく、県政史上画期的な知事選になろうとしている。さらに、政党の支援を求めない無所属市民派の政治家として県議や尼崎市長を延べ20年にわたって担ってきた、前尼崎市長の稲村和美氏が市民団体の要請を受けて立候補を表明し、兵庫県で初めての女性知事として、全国的にも希少な「無所属市民派」の知事が誕生する可能性がある。
自公政権が末期的症状を示している中で、この国の中央政治もようやく次の時代への光明を見出す希望が生まれている。そのためにも、この国が地方分権システムに移行してから25年目の節目の年に、中央政党の軛(くびき)から脱した本来の地方自治体「兵庫県」を実現する、千載一遇のチャンス。 私たちはここ数年、国政の絶望的な状況を前にして「市民主体の地方自治」再生から、この国の変革と民主主義の再構築を図ろうと呼びかけてきた。いま、そのチャンスが兵庫県知事選に巡ってきている。
残念ながら昨年の選挙では貴重な機会を逸したが、このチャンスを逃すことなく、長年の中央政党支配の知事選から脱して、地方分権時代にふさわしい知事選と知事選出を実現する努力をしたいものだ。
県政のあり方と知事選のあり方を明確にした「ポスト斎藤」県政に焦点を当てる
「中2階」行政ともいわれる県政については、市民はどちらかというと関心が薄く、市町村の基礎自治体選挙のように“身近さ”を感じてこなかった。また、広い県土を舞台に行われる知事選では「政党や組織がなければ対応できない」と端から取り組むのに“あきらめ”の感もあった。
しかし昨年の選挙や、今回の参院選兵庫選挙区を見ても、中央政党は一歩下がって支援に回り、自治体独自の選挙を行うことの可能性も生まれつつある。選挙戦よりも、より重要なのは「県政をどのような政策で県民の身近な行政にしていくか」にある。さまざまな暮らしの課題に取り組んでいる多様、多彩な分野を担う市民運動が連携して、県政に関する政策学習を行ない、具体的な県政の課題を提案していくことも大きな課題ではないか。
斎藤辞職へ主導権をとるのは誰か
県警、地検による刑事責任の追及は、斎藤の刑事的責任を取らせるためには必要だが、司直に依存しての県政再生に期待するだけでは、本当の県政再生にはならない。
公選法違反、公益通報者保護法違反、個人情報保護法違反、公務員の守秘義務・秘密漏洩等々の刑事訴追の動きは、過日の郷原弁護士の講演にもあったように「刑事訴追が市民の期待通りになる」という保証はない。
公益通報者保護違反について、消費者庁の見解に斎藤が「従わない」発言をしていたこともあるが、「国の見解に従わない」ことをもって知事の対応を批判するのは「極めて危うい」と、初代消費者庁長官でもある元我孫子市長の福島浩彦氏も懸念を表明していた。「斎藤知事の対応は論外だが、消費者行政は本来的には自治体が責任をもって行うべきもので、国の権威を借りて知事を批判するのは地方分権の本来の趣旨から逸脱する」としていた。
県議会は、二元代表制を機能させるために勇断を振るって知事に辞職を迫るべきだが、県議会にそうした対応を促す主権者県民の働きかけは重要になる。
主権者である市民、県民が知事辞職を主導できる方法としては地方自治法により「リコール」を求める直接請求がある。しかし、昨年の知事選当時の有権者数446万人の3分の1の署名(約150万人)を2カ月で集めるというエネルギーを要する。斎藤辞職を求める政党や県議会会派等が組織的に動けば、画期的なリコール署名が成立する可能性はあるが、最終的な選択肢として議論する価値はあるだろう。
7月参院選「兵庫選挙区」の状況と県政再生への影響
兵庫は、定数が「3」に増えた2016年以降の10年間、「自・公と維新」に議席を独占されてきた。今回は維新の支持率低下と、自公与党の協力関係に赤信号が灯っていることもあって「立憲野党議席の奪還」の千載一遇のチャンスになっている。
圧倒的な知名度を持ち、早くから先行している泉房穂・前明石市長が無所属で立憲の推薦を受けて最有力と見られているが、斎藤知事が最も嫌っていた市長でもある。維新とともに自・公の現職2名も逆風下にあるため、国民民主は支持率が急降下しているとはいえ依然、公明を大きく上回る「野党第2党」を維持していることから、野党が2議席奪い返す可能性もあり得る。
それだけでも兵庫県の政界は激変する。仮に「れいわ」が3議席目に滑り込むようなことになれば、「全国最大の注目選挙区」の兵庫の結果は、今後の政治情勢に大きなインパクトを及ぼすことになる。きわめて厳しい想定だが、県政再生への条件づくりも踏まえて努力する価値はあるだろう。
ついでながら、連帯兵庫みなせんは「すでに兵庫では“市民と野党の共闘”に取り組む基盤は消滅している」と認識し、主権者・市民が政治に関わる方策の新しい展開を模索中である。全国的にも、東京や北海道と一部の県を除き、2015年以来続いてきた「市民と野党の共闘」は終焉し、新たな市民の政治へのアプローチを模索するときであると提案している。
足元の基礎自治体における自治体改革への取り組みとともに、県政への取り組みと併せて、自治体改革と国レベルの政治改革を一体に取り組む市民の視点を創り出していきたい。(おわり)
