玉城デニー知事は「この美しい島は、激烈な戦火に襲われ20万余のかけがえのない命を奪い去りました。まさに『ありったけの地獄を一つに集めた』ともいうべき状況となった。凄惨な沖縄戦の実相と教訓は、私たち沖縄県民の平和を希求するこころの原点になっています」と述べ、「国際平和研究機構」の創設を呼びかけ、「沖縄から平和を発信し続け、行動することが世界平和につながる」と話した。摩文仁の丘で開かれた、戦後80年、6・23沖縄全戦没者追悼式での言葉だ。
沖縄戦は現地総動員作戦、「軍官民共生共死の一体化」のもと、本土決戦にむけ兵力温存、現地自給主義、現地物資を(一木一草といえども)活用すべしのもとで行われた。住民による「防衛隊」、今の中高校生くらいの生徒による「学徒隊」「鉄血勤皇隊」が動員、組織され多くの人が亡くなった。さらに、日本軍による「スパイ取り締まり」のもと、住民虐殺、強制集団自決などの悲劇が起きた。
沖縄戦の戦没者は、沖縄県民は12万2228人(一般県民9万4千人、軍人・軍属2万8228人)にのぼる。他の都道府県出身の日本軍は6万5908人、米軍1万2520人、約20万に及んだ。

再び戦争の島にするのか
政府・閣議決定した安保関連3文書(2022年12月)のもと、南西諸島の防衛力、軍備強化が進んでいる。琉球弧の島々を含む「第1列島線」に沿ったミサイル網が構築されている。沖縄の日本に復帰した時に3施設、約166ヘクタールだった自衛隊施設は、23年時点では57施設、約811ヘクタールに拡がった。
今後も、陸自那覇駐屯地を拠点とする第15旅団の師団への格上げ、陸自沖縄訓練場内の補給拠点の新設、北大東村への空自レーダー配備などが控え、機能強化の一途をたどっている。政府は、昨年6月、台湾有事などを念頭に宮古、八重山諸島の住民約12万人を九州各県と山口県に避難させる計画を示した。これまで国、県、宮古、八重山諸島の5市町村などが参加する図上訓練を2回実施している。2026年度には、初めて実働訓練を行う予定といわれている。

軍隊は住民を守らない
沖縄戦では1944年、南西諸島防衛のため日本陸軍・第32軍が配備され、学童と老幼婦女の疎開を実施。九州へ8万人、台湾に2万人の計10万人を疎開させる計画があった。戦火から住民を避難させるだけでなく、戦争遂行のために、地上戦で邪魔になる者を事前に退去させる目的もあった。
いま、「再び戦場になるのでは」という危機感が高まっている。今年の慰霊の日、石破首相あいさつのとき「約束しろ、戦場にするな」と抗議の声が上がった。沖縄を再び、戦場にさせてはならない。
私たちは、先人たちの教訓「戦争は人間が人間でなくなる」「軍隊は住民を守らない」「命(ぬち)どぅ宝」をかみしめ、戦争を繰り返してはならない。「戦争反対」の声を上げていく。(庄)