7月の参院選、斎藤知事の問題が続く兵庫選挙区(参院選は全県区、知事選と同じ)を振り返り返ってみる。(文中、敬称略)
「斉藤不信任案画策の黒幕」とSNSで流された(フェイク)泉が、断トツのトップ当選、選挙区候補としては全国最多票だった。定数2だった(~2013年)ころは、トップ80~90万票前後のこともあるが、定数3になってからの80万票は初めてである。

兵庫は泉82万票で追い落とした
立花が「反斎藤の泉」と、泉の宣伝カーを執拗に尾行し妨害する「ステルス戦術」を画策した。一方、吉村が7回も兵庫入りしても、維新は過去2回の票数の半分に届かなかった。
出口調査では、無党派層の4割弱、維新支持層の3割強、自民支持層の3割弱、共産支持層の2割弱、女性の3割が泉に投票したという、圧倒的支持だった。有権者数2,708,511、36年ぶり投票率60・47%、前回2022年より8・85%アップだった。
考えてみたいのは、斉藤再選の111万票のうち何割が泉に入れたのか、この2年間で何割の人が「間違っていたかな」と反省したか。それが、今後の県政民主化の市民運動のステップにつながるのか…という点もある。
前述の出口調査結果(RDD方式でかなり精密)から、最低でも3分の1以上の人が、「誤り」に気づいたのではないか。
県民局長のプライベート情報を立花に漏洩した維新議員や、議会に流せと指示したのは斉藤知事である(第3者委報告)ことが明らかになり、維新は信頼を失墜し惨敗した。
泉房穂という実績ある候補の登場に助けられたとはいえ、2022年参院選→知事選→今回参院選の流れの中、百条委員会や第3者委員会の調査、さまざまな市民運動が、「斉藤再選の反動」をどこまで押し返したといえるだろうか。それら検証も重要になる。

斎藤支持層にも影響か
「兵庫の選挙」は、斎藤県政問題で全国から注目された。その県政民主化の動きは、全国にも大きな影響を及ぼすだろう。今回は、「よくやった!」と言えるのではないか。他方で排外主義政党・参政党と、NHK党に43万票も流れている事態は、看過できない。
マスメディアは「自公政権の大敗北」「保守の多党化」「政局不安定」と掲載した。他方で参政党・国民の躍進、「日本人ファースト」の排外主義が一定の層を獲得している。
「政局不安定」は両刃の刃になる。西欧型の極右の台頭の危険と、物価高、生活苦、消費税廃止・減税を求める世論が、社会変革を求める契機にもなるだろう。

「支持政党=政策」なき危うさ
参政党は、「Party of Do It Yourself」=「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる」を合い言葉に2020年に発足した。わずか2年後に、参院選で170万票、国会議員1名で国政政党に。24年衆議院では、新たに3人の国会議員、併せて4名に。地方議員は全体で140名、党員は8万5千人。「オーがニック右翼」といわれる。
「オーガニック」を大切にする人には、もちろん「政治を大切に考える人たち」が大勢いるのだが、「オーガニック」をインスタグラム等でみると、アルゴリズムによって「参政党」が出てくる。参政党は、支持層のターゲティングが非常にうまい。ワクチンへの陰謀論も訴え、そこからオーガニック重視の層を取り込んでいく。
計16億円の収入を有し、その9割が個人カンパである。熱心な参政党支持者の人たちは驚くほど政治的に無色、支持する以前に政治そのものに関心がないため、政治的免疫がないという。「自分の生活が第一」だった政治的無関心層が、熱心な支持者になるケースが多い。陰謀論にもはまりやすいという。
神谷代表の独裁的な手腕や、組織実態は相当でたらめ。秋には内紛が起きるとの評論もある。参政党の極右的主張、「天皇制憲法草案」「核武装は安上がり」等については、さまざまに論じられており省くが、経済的財政政策的には、れいわに近いようだ。

民主主義とCОを考える
運動手法、組織運営について、参政党が支持拡大に用いる手法である「コミュニティ・オーガナイジング(CО)」の背景には、「ユダヤ系を中心とした国際金融資本やグローバリストが日本を脅かし、マスコミや製薬会社が支配されている」「真実に目覚めた『私たち』が団結し、既存体制を倒す」といった陰謀論に基づくナラティブ(物語)が共有されていると指摘している(ウイキペディア)。市民運動の「CО(コミュニティ・オーガナイジング)学習会などでも、CОの悪用を対象化する必要がある。(啓)