「東アジア(韓国・台湾)の事例から考える、市民運動の在り方」という、上前万由子さんの話とワークショップに参加した(主催/明石神戸PFAS汚染と健康を考える会)。
上前さんは、ソウル市社会イノベーションセンター企画戦略での勤務から、現在は東アジアの社会イノベーションの国際交流事業や、教育プログラムの仕事に従事している。
台湾では2016年、民進党政府になってから、国家発展委員会による公共政策オンライン参加プラットホーム(Join)が設立された。女子高校生たちが、ストローをプラスチックから自然分解原料への転換の提案し、政策を実現したこと。オードリー・タンデジタル大臣のオープンガバメント(開かれた政府)協働会議の発足のこと。「g0v(ガブゼロ)」の取り組みで、「環境保護規定違反工場の通報システム」「LINE上のフェイクニュース・ファクトチェック」「台湾方言辞典」「新型コロナ情報市民提供プラットホーム」などのシステム実現のことも話があった。これらの「参加型民主主義制度」実現のきっかけには、2014年の「ひまわり運動」が大きな役割を果たした。

社会問題に向き合う生活
韓国ソウルでは、「ソウル市ニューディール事業の長期インターン制度」(学生が企業や自治体などで就業体験する制度)の話が素晴らしかった。パク・ウォンスン元市長が開始した雇用支援制度から、「最賃より高い月給+職務教育受講可能」で最大2年の長期インターン制度など。社会問題解決に向き合いながら生活できる仕組みで、「正社員の環境活動家」が生まれるケースもあるという。市民参加制度に、キャンドル革命が大きな動力になったに違いない。
「オルタナティブ(もうひとつの)社会」を求め足踏みしている間に、ウクライナ侵攻戦争やガザのジェノサイドが始まり、トランプが次々絵MAGA(メイク アメリカ グレイト アゲイン)政策を世界に強制し、日本では公益通報者保護制度を踏みにじる知事が再選され、「核武装は安上がり」と主張する政党が躍進する。
前述したシステムは、やる気さえあれば日本社会でも、いますぐにでも実現可能だ。東アジアで最先端の市民参加型民主主義を切り開いている、韓国や台湾がお隣にいる。パク・ウォンスン元市長は、かつて日本中を回って日本の市民運動を徹底的に研究したという。今度は日本社会が、台湾や韓国社会から切り開かれた市民運動をくまなく調査し、学び尽くす番だろう。

「見たことのない未来」の話へ
台湾の政府や社会には、「リバースメンター(若手が年長者に助言すること)」という新しい文化が生まれているという。上前さんの話を聞き、アイスブレイクやワークショップの斬新な集会運営、参加型集会の活発なありかたも経験できた。
集会後、『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』(オードリー・タン/SB新書)を購読した。上述の素晴らしい民主主義の取り組みが、具体的に詳しく説明されている。学ぶ価値は存分にある。
「正社員の環境活動家」が生まれるなどは、素晴らしい。家族や市民生活を犠牲にするような活動家のスタイルは、もう古いのかもしれない。上前さんのような若者が続々生まれてくる社会に期待したい。そういう若者たちに、教えられるのは素晴らしい。(啓)