
ポプラ社が1970年に初版を発行した、『碑 いしぶみ』はロングセラーを続けてきた。
1981年17刷、2009年には新書版を発刊、これも10数版を重ねている。本書は、1945年8月6日、広島で爆心500メートル付近に集合していた旧制廣島二中1年生、その全滅した321人一人ひとりの生前の言葉や足跡、当日のこと、遺族の証言などの記録である。
旧版のとき、私の身より、兄の名前の読みルビが間違っているのに気が付いた。「たいしたことでもないし、そのままにしておこう」と思った。しかし、ゆくゆくは、このまま残ってしまうのか」と思い直し、ポプラ社に「些細なこと、名前の読みのルビは、こちらが正しいのですが…」と手紙を書いた。すると、折り返しすぐに「この本は、ポプラ社として最も大切に発行してきました。すぐに訂正させていただきます」と丁寧な返事が届き、次の版から小さなルビが直った。
「コミック版」が出版されたことを、最近のネットニュースで知った。広島市の本通りにある書店によると、「被爆・終戦から80年を機に、関連する絵本や書籍60点余りを集め『戦争と平和』コーナーを設けました。『漫画 いしぶみ』は100冊を仕入れ、関連書籍ではいちばん売れています」と売れ行きは順調、すでに増刷も決まったらしい。「コミック化にあたっては、リアリティにこだわり、当時の町並み、生徒たちが飛び込んだ川の幅や深さなどリサーチし、監修を重ね、制作しました」とある。
「後世に伝えつづけることに、本がすごく大きい役割を果たすのかなと思う。犠牲となった生徒たちのことを忘れず、あの悲劇を決して繰り返さない。マンガがつなぐ未来への決意です」(紀伊國屋広島店・山本店長)。
『はだしのゲン』とともに、低学年の子どもたちはもちろん、高学年、大人にも読んでほしい。
(竹田)*ポプラ社:A5判、定価1650円/税込み。
