在日コリアン3世、会社役員の李香代(リヒャンデ)さんが、添田詩織・泉南市議に550万円の損害賠償を求めた裁判で、大阪地裁第16民事部(山本拓裁判長)は、添田氏に55万円の慰謝料の支払いと投稿内容の削除を命じた(10月24日)。
「一部勝訴」「ヘイトスピーチ規制に新たな希望」という「旗出し、文字」が支援者の前に出され、大きな拍手で迎えられた。李さんと弁護士は、晴れやかな顔だった。後の報告会で、「こちらの要求が全部認められたわけでないので一部勝訴となっているが、内容的には全面勝訴だ」と説明があった。
「SNS上で不特定多数の差別発言を誘発する『犬笛型』ヘイトの違法性を認め、削除を命じたのは画期的だ。ただ、民族的属性に着目した差別認定には至らなかったのは残念だ」と報告された。精神的苦痛に対しての慰謝料としては、民事の相場からいうとかなり高額になっている。
添田氏は、李さんが勤務するイベント会社が泉南市と業務委託契約をしていることを問題視し、李さんの従いとこが韓国で捏造されたスパイ事件で死刑判決(後に無罪判決。当時の大統領から謝罪も受けている)を受けたことや、朝鮮学校無償化を求める運動にかかわっていることを顔写真を載せて言及する投稿をしていた。裁判の中で添田氏は、「差別はしていない。ネット上の情報をググっただけだ」と言っていた。

判決は、これらの一連の投稿が「李さんの社会的信用を低下させ、名誉を棄損する」として、プライバシー権や肖像権も侵害すると判断した。さらに、添田氏が数万人のフォロワーを持つ点に着目し、相手を差別する言葉を直接使っていなくても「一定の政治的思想を持つ人による、李さんへの攻撃を誘発する危険を含むものと言える」と指摘した。
一方、李さんが主張する「在日コリアンに対する人種差別に当たる」という点については、「個人の親族関係や活動に言及したもの」として認めなかった。報告集会で李さんは、「勝っても負けても動じない。声を上げること、社会に問いかけることが大事。おかしいことにはノーと言いたい」と語った。(陶)