スパイ防止法制定に向けた動きが強まっている。11月13日の衆院予算委員会で高市早苗首相は、「外国勢力から日本を守っていく対応を検討していきたい」としてスパイ防止法制定に意欲を見せた。翌14日には自民党が、日本版CIA=「国家情報局」創設とスパイ防止法制定を目的とする「インテリジェンス戦略本部」を立ち上げて初会合を開いた。
中曽根政権時代の1985年に国会に提出されたスパイ防止法案は、「国家秘密」の内容や「探知・収集」「外国に通報」「他人に漏らす」などの行為類型が広範囲・無限定で、調査・取材、言論・報道、日常会話などのすべての活動が含まれていた。しかも最高刑は死刑だった。こうした内容が「民主主義の根幹を脅かす」と猛反対をうけ廃案となった。
なぜ今、スパイ防止法が再び登場してきたのか。それは2022年12月の安保三文書改定以来、急速に進む日本の戦争準備と無縁ではない。戦前のスパイ防止法に相当する「軍機保護法」は、当初は軍人を対象としていたが、その後、一般民に適用範囲を拡大され、軍港、飛行場、工場などの撮影や観察までが罪に問われた。こうした軍機保護法や治安維持法によって、報道・学問の自由は萎縮し、人びとの表現の自由も抑圧され、総力戦態勢が作られていった。その結果が中国侵略戦争からアジア・太平洋戦争に行き着く破滅の道だった。1945年の敗戦までにアジア諸国で2000万人(日本人は376万人)にが犠牲になった。これが80年前にこの国で起こったことだ。その歴史を繰り返してはならない。
国民民主党や参政党が独自のスパイ防止法案を明らかにしており、日本維新の会は自民党との連立合意書のなかで「スパイ防止法成立」をうたっている。衆参両院でスパイ防止法に賛成する政党が過半数を占めている。40年前、スパイ防止法制定運動を全国的に推進していた旧統一協会・勝共連合はいまでも自民と深く関係している。事態は予断を許さない。直ちに広範な反対運動が必要だ。
