
*11月29日、「いちばぎゃらりぃ」講演要旨レジュメ(松本誠:元神戸新聞記者)
1、いま私たちは何処にいるのか?
・ 2025.10.10政変を「歴史に残る日」と書いた理由
・「自民党政治の終わり」の中で生まれた高市政権をどう見るか
・与野党含めて「既存政党」の終わりの始まり(既存の社会システムの行き詰まり)
・本格的な多党化時代の始まりに対応できない政党と政治家
・自治体政治も含めて「熟議民主主義」から再出発の可能性
・1989年から始まった「歴史的転換期」の“トンネルの出口”は、見えてきたか?
・歴史的転換期 4つの側面と地球環境の窮迫
東西冷戦構造の終焉:多極化時代の始まり、グローバル化進行下の新たな極地戦争続発
55年体制の崩壊:与野党逆転、連立政権時代の始まり
高度成長経済の終焉:バブル崩壊、地価下落、大企業の破綻、政・官・財連携の崩壊
新しい市民社会の胎動:NPО・NGОの伸長、ボランティア、女性、地方分権と住民自治
地球環境の窮迫と災害の世紀へ:阪神・淡路大震災、地震、噴火、洪水、旱魃、食糧危機…
・人口爆発と人口減少の同時進行、人口減少社会への対応
・ 出口の見えない政治の貧困下で、進む暮らしの貧困と格差拡大の閉塞状態の中で
・強い力や発信力の強いリーダーに期待する風潮。断言する政治家や宗教集団に惹かれる
・自分の足と頭で考えるのではなく、依存、お任せ体質が広がる(民主主義とは逆のベクトル)
・つけ込むポピュリズム政党や怪しげな新興宗教集団が勢力を拡げる
・SNSという伝達手段の“負の側面”を活用した「犬笛効果」に流される

2、「いつか来た道」との類似性と異なる側面
①軍国主義へ突っ走った戦前昭和の空気と動きにみる類似性
・軍拡予算、憲法改正(9条等)への賛成増大、非核三原則の見直しと核武装、スパイ防止法等の人権抑圧、大学の軍事研究‥‥戦前回帰ときな臭さ
・「人びとの社会戦争―日本はなぜ戦争への道を歩んだのか」(益田肇著、岩波書店)
高揚する「空気」が国家を導く先に⇒普通の人々が戦争を後押しする社会の空気を後押し…
②戦後80年が生み出した平和と人権主義のすそ野の広がりと浸透による土壌(戦前との違い)
・自民党が戦後80年の大半を政権政党として維持できたのは、「国民政党」だったから
・自民党内での“疑似政権交代”を繰り返し、保守政党と位置付けなかった(御厨貴)
・「自民党は終わった」←体力と資質で政権担当能力を喪失+高市右派政権を選択して拍車
・市民社会の伸長→既存のアクター(政治と行政=官、企業=民)+市民セクター
・環境NGOは1992年のリオ国連環境会議以降、政府機関と並ぶ交渉勢力に
・市民運動の歴史的展開の経緯
・永田町政治の枠組みからしか見ない政党や政治家とメディアの限界
3、人まかせと目先の損得から、自分の意思と長い視野で見る生きざまへ
①多様性の時代、多種多様な人々が共生、共存「みんな違って当たり前」
・シロクロ明白にしにくい時代⇒ああでもない、こうでもないと時間かけて合意形成が必要
・断言、明白な主張には気をつけよう 社会の分断煽るトランプ、安倍、高市的宰相の言説
・揉めれば揉めるほど面白い。とことん議論して合意と妥協点を探ろう(熟議民主主義)兵庫県の諮問機関(武庫川流域委員会)での経験から
②日本的ポピュリズムの系譜と短絡的思考に流れる「操作される大衆」
・小泉純一郎から橋下徹と大阪維新の会の登場(2000年代初頭から後半)
・目先の利益と威勢のいい言説や愛国主義による扇動、憂さ晴らし求める大衆を引き付ける
・参政党と国民民主党
・長くて複雑な文章を読めなくなった大衆は、短絡的な情報に流されやすい、兵庫知事選
・「旧メディア」と「新メディア」という色分け SNSとネット情報の落とし穴
・メディアリテラシーの欠如
③トランプのアメリカに登場した34歳のニューヨーク市長ゾーラン・マムダニ(ニューヨーク市、人口820万人)
・最年少当選、ウガンダ出身のイスラム教徒、民主社会主義、ラッパー、州議会議員4年
・選挙の手足となったボランティア10万人 全米から殺到し戸別訪問
・予備選で勝利のあと、若い世代の立候補を支援する政治団体RFS(ランフォーサムシング、何かに立候補しよう)に、1万人以上が登録。2017年に設立後、オンライン訓練プログラムを提供し、登録した20万人が全50州で3700人以上が州や地方の議員に立候補し、約1500人が当選したという。(紹介した庄司香・学習院大教授「怒りは人を動かすが、希望もまた人を動かす」)/2025/11/2朝日新聞コラム
→日本でも20代~30代がポピュリズム政党に傾斜している一方で、地道な社会活動を
続けている20代~40代が増えている。
50年近く、そうした市民運動、市民活動の底辺を継続的に観察し続けてきた眼からは、
新しく訪れようとしている「新しい市民社会」の担い手群像に希望を抱いている。
<松本誠:自己紹介と私の生き方>
1944年生まれ。戦後90年とともに歩んできた戦後史と自分史。1967年に記者生活を始めてから、神戸新聞で37年。在職中から75歳を超えるまで大学で教壇に立ち、
25年間、学生と交わる。並行して市民まちづくり等の市民活動を担って37年。自分では今もジャーナリストの気概を背負い、種々の活動、運動にかかわっている。
世界と日本と地域の政治、経済、社会を見つめて、今どのような位置に居るのか、社会は何処へ向かっているのかを常に見定めながら、自分の立ち位置を模索する日々…。
