
疎外されている、見捨てられている、無視されていると感じる人々の間には、とことん不快感が蔓延している。自身の内に潜む怒りを放ち、その矛先を示すカリスマ的指導者に声援を送り、この指導者に従う以外にできることはないと感じるようになってきている。
世界中で、極右ポピュリズム運動の台頭が見受けられ、社会そのものが極度に右傾化しだした。この状況を利用し、ナショナリズム、反グローバリズム、反移民、人種差別主義、排外主義、反共主義、反民主主義、権威主義の政治を土台とする、資本権力の再建が試みられつつある。
ドイツで生まれた右翼政党は、「移民反対、外国人嫌悪、そしてナショナリズム」というものだ。新自由主義によりかかり、国家主導型の自由市場を目指している「ドイツのための選択肢」である。彼らは、ナチスの宣伝戦略をも利用しつつ、新自由主義を擁護する。ポピュリズム的右翼運動と、新自由主義的プロジェクトとの同盟関係を結ぼうといている。
イギリスはどうか、「労働党」と「保守党」の二大政党が、支持を取り戻そうと躍起になっているらしい。「中道左派」の労働党は、自らを「愛国的な政党」と宣言し、「愛や誇り」「共通善の奉仕」を呼びかけている。難民申請者のフランスへの送還、不法就労の取り締まり、難民家族の呼び寄せ制度の厳格化、国境管理の強化方針をとっている。
右派ポピュリズム政党「改革党」は、「英国民を最優先する」として移民に厳しい政策をとり、最大60万人の移民の強制送還を打ち出している。イギリスでは、経済成長が停滞し、生活費が高騰し、家賃が高騰している。移民に関する議論が極度に集中し、社会のさらなる右傾化と、分断化が引き起こされている。
わが高市総理の「憧れの人」、英国のサッチャー元首相は、英国の福祉国家を食い物にした。サッチャーによる新自由主義改革、サッチャリズムが「ゆりかごから墓場まで」までと称され、英国労働党政権によって確立された社会保障政策を破壊した。建設されていた公営住宅を個人に売却し、脱産業化で失業者を支えていたセーフティーネットをも削り倒しながら、国営の水道、電気、ガス、通信、鉄道、航空などの事業を民営化し、民営化分の政府部門の経済を削減する政策に転換した。福祉国家の遺産にすがり、食いものにしながら新自由主義経済を押し開いていった。
サッチャー、レーガンの影響を受けた中曽根政権は、「規制緩和」と「民営化」へ、国鉄分割民営化を断行し、「思いやりと責任」、「たくましい福祉と文化の国日本の創造」と称し、「行財政改革」のもと社会保障、文教関係費の支出削減、老人医療無料制の廃止を行なった。「自分の責任で生きることが人生の美しさ」などと、新自由主義は社会保障に頼らないことを、あたかも道徳のごとく自己責任の価値観としていった。しばらく前の「親ガチャ」しかりである。親を撰ぶことはできない。これらは、日本社会における経済格差、教育格差、希望の格差、安心の格差といった社会問題を浮き彫りにしている。
新保守主義と新自由主義の同盟、ナショナリズム、反グローバリズム、反移民、人種差別主義、排外主義、反共主義、反民主主義、権威主義…。格差の拡大は階級構造を一変させ、日本社会を新しい階級社会に変貌させた。産業構造は、高度な技術や判断力を必要とする高賃金のものと、低賃金の単純労働に分極化し、そうして最下層のアンダークラスが生まれた。
グローバル化は、労働力と生産手段をいっそう流動化させ、労働者は安定した雇用と賃金が保障されなくなっている。そして、子孫を残さなくなった社会は、持続不可能なものとなっていく。(嘉直) (つづく)
