
東京商工リサーチの調査によると、2025年の「介護事業者(老人福祉・介護事業)」の倒産は、前年比2.3%増の176件となり、2年連続で過去最多を更新した。特に3年連続で最多を更新した「訪問介護」事業者の倒産が91件(同12.3%増)と突出し、全体の件数を押し上げた。
2025年に「訪問介護」の倒産が増加した要因としては、2024年介護報酬のマイナス改定の影響が大きい。ヘルパー不足に加え、ガソリン代など運営コストの上昇も資金繰りを圧迫した。介護事業者の倒産原因は、利用者の獲得競争や人手不足による利用率の落ち込みが大きく、「売上不振(販売不振)」が140件(構成比79.5%)と約8割を占めた。
規模別では「資本金500万円未満(個人企業ほかを含む)」が128件(同72.7%)、「負債1億円未満」が141件(同80.1%)、「従業員10人未満」が142件(同80.6%)と、規模が小さい事業者が多数を占めた。
自助努力だけでは無理
東京商工リサーチは「政府による人件費支援などはあるものの、介護業界の人員確保やコスト上昇への対応は、自助努力だけでは追い付かないレベルまで深刻さを増している。2026年も倒産が続く可能性が高い」と分析する。介護人材不足はこれまで「2025年問題」と呼ばれてきたが、その2025年1年間、政府と厚生労働省がおざなりな対応で事実上問題を放置したことにより、事態は一層深刻になってしまった。
過去最高の冬ボーナス
そうした、ほとんど八方塞がりの状況ながら、この冬に意外なことがあった。なんと、私の事業所が冬の一時金(ボーナス)を夏以上に出したのだ。私の勤める訪問介護事業所は、 資本金500万円未満の小規模事業所(倒産予備軍)で、これまで毎年夏の一時金はなんとか基本給1カ月分を絞り出して配っていたが、年末はいろいろ支払いが立て込むので冬の一時金は「夏の半分」とか、「出せない」ということが続いてきた。
ところが、今年の夏ごろから急に業績が上向きになったのである。これは地域で訪問介護事業所が次々と閉鎖され、いわゆる「介護難民」が発生しつつある状況が、こうした形であらわれていると考えられる。
こうなる理由のもう一つは、私の事業所のヘルパーの平均年齢が低いからだ。常勤ヘルパーの平均年齢は50歳を切る。最年少は26歳である。いま、訪問介護ヘルパーの全国の平均年齢は、65歳を超えている。ニュースで、80歳近いヘルパーが現役でやっていることが、ときどき紹介されるほどだ。なので、どこかの事業所が閉鎖したときに、そこにいた利用者を新たに受け入れる事業所がそでほど多くないのが現状だ。
若い人材を介護職場に
結論から言うと、若い人材を大量に介護職場に集めることが問題解決につながる。そのための処遇改善が必要だ。全国平均から月8.9万円低い賃金の改善はもちろん必要…。その上で、若い人たちの自立生活を後押しするために、たとえば市営または県営住宅の、高齢者に評判の良くない「階段タイプの4階・5階」を5年〜10年、家賃無料で介護ヘルパーに保証するなどの施策はすぐにでも可能と思われる。これだけで、実質ひと月4〜5万円の底上げになる。
あるいはバイク・乗用車の運転免許取得補助も有効だろう。今どきの若い人たちは、そもそも車を持たなくなっている。「親から自立するには介護ヘルパーがおすすめ」くらいの勢いでやらないと、この現状は突破できない。
私の場合、勤める事業所が倒産プレッシャーから解き放たれつつあるので、この時間と空間を利用して「より活動を強めていきたい」と、今年は年初から決意している。全国の介護・福祉労働者のみなさん。「死中に活」の精神で、今年も折れずに生き抜きましょう。(小柳太郎、神戸市/訪問介護ヘルパー)
