
ハン・ガン(韓江)の『少年が来る』を図書館に予約し、1年後に本が届いた。女性作家のノーベル賞受賞(2024年)は、アジアで初めてと話題が沸騰した。記念講演が、また素晴らしく予約待ちは200人と言われた。
舞台は光州事件(1980年5月)だ。12歳のとき、父の本棚に背表紙を裏返した『光州写真集』を手にした。「人間の残酷さと尊厳の間を、2つの壁を結ぶ存在不可能な空中の道を進むためには、死者たちの助けが必要だった」という。
「人間への信頼が砕け散ったある時に、10日間のコミューンを闘い抜き、夜明けに戻ってくると予告された全斗煥の軍隊に、YMCAの建物に最後まで残って殺された一人の夜間教師の言葉の雷に打たれ」「現在が過去を助けることができるか?生者が死者を救うことができるのか?」という、20代半ばの自らへの問いは「過去が現在を助けることができるか?死者が生者を救うことができるのか?」と反転した。
夜明けに戻ってくる軍隊に対し、最後まで道庁に残った市民・学生たちは、高校生以下の者を家に帰す方針をとった。15歳の少年トンホは家に帰らず、庁舎に戻って死んだ。またトンホの友人チョンデが積み上げられた自分の死体によりそう魂となって独白する。この少年らが、現在の読者たちの前に現れるという意味で『少年が来る』であり、亡くなった人たちに、幼いトンホとチョンデに、「自分の体と命と感覚と感情と生命を貸し与えた」とハン・ガンは語る。
この光州蜂起を小説家がどんな思いで語るのか、興味津々だった。また、けっして裏切られなかった。「過去が現在を助け、死者が生者を救う」ために、全身全霊かけて死者と交信し、死者を今に生き返らせなければならない。ハン・ガンは、900人のコミューン戦士の記録と向き合った。
光州事件という人間の行為、歴史を今に生々しく蘇らせることをハン・ガンは成し遂げたように思う。次は、4・3蜂起の『別れを告げたい』を読みたい。(啓)
