
ベネズエラ、グリーンランド
ベネズエラへの軍事行動は、ベネズエラの反米・社会主義マドロゥ政権を倒し、「石油は俺たちのもの」という、南米最大の産油国、埋蔵量を有する石油資源の略奪である。そして、全世界に「軍事力こそがすべてを決する」ことを突きつけた。
さらに、「グリーンランドの領有」である。トランプは、西半球のことは俺が決める」と、デンマークの自治領であるグリーンランドの「領有」を宣言した。それは、「ロシア、中国が領有に乗り出すことを防ぐためだ」とする。グリーンランドは気候変動で氷床が溶け出し、レアアース、ウラン、鉄などが採取されやすくなっている、地域には石油ガスが大量に埋蔵されているという。
トランプは、「絶対に必要だ。防衛のためだ」としている。ベネズエラに引き続き、グリーンランドでも資源略奪のための軍事侵略を行なおうとしている。「西半球は俺たちのもの」という宣言どおり、軍事力、武力で自然資源の略奪を開始しようとしている。「国際協調は幻想だ。世界を動かしているのは軍事力、力だ」という。イラン各地で拡大している政府への抗議デモに介入し、反米主義のイランに武力攻撃を加え政権の崩壊を狙っている。

イランを空爆
トランプにとって、中東・アラブでの「反米主義」など決して許されないのだ。イスラエルの軍事的強化を要に据えながら、イスラエルの極右シオニスト政権を全面的に支援し擁護しながら、中東・アラブから反米主義を一掃し、中国・ロシアを一掃し、中東・アラブの全的支配の強化をつくりあげようとしている。イランは、サウジアラビアに次ぐ世界第2位の原油埋蔵量が存在している。
周知のとおり、帝国主義各国のパレスチナへの侵略と植民地支配は、帝国主義国にとって石油資源の確保が死活的重要性を持つことを鮮明にした第一次大戦期に既に本格的に始まっている。今の中東も、石油資源獲得の欲求に覆われている。
「新たなグローバル秩序」
新保守主義、ナショナリズム、反グローバリズム、人種差別主義、排外主義、反共主義、反民主主義、権威主義の道。21世紀の新たなグローバル秩序が形成されようとしている。主権国家そのものを踏みにじり、グローバルな新保守主義という資本主義が形成されようとしている。
19世紀前半の米国で誕生した「モンロー主義」という外交方針がある。モンロー教書には、「米州諸国の独立」「この圏域におけるヨーロッパによる植民地化の否認」「米州諸国以外の勢力によるこの圏域への不干渉(同時に米州諸国もヨーロッパなどの他の圏域への不干渉)」という三つの構成要素からなっている。
モンロー主義は、かつてのオランダやスペイン、イングランドやフランスといった「古い植民地主義を批判した」ものとされる。ただし、それは単に諸国家システムを活用し経済的な帝国主義を追求するようなものではなかった。モンロー主義の核心は、あくまでも資本主義的な世界市場を否定すると同時に、外部勢力の干渉を拒否する、諸民族の圏域秩序を保障するものだったが…。
しかし、日本版「モンロー主義」は、アジアにおける排他的な覇権(自給自足圏)を確立することにより、「大日本帝国」の自立を図ろうとした。その「日本版モンロー主義」は、英米の帝国主義に対抗しつつも中国や東南アジアを植民地化することを試みたものだ。東アジア、東南アジアから南太平洋へ、さらには「満州国」建国を通じユーラシア大陸への拡大も追求されていた。自国の経済的自給を図るためだけに、主権国家システムを超え「大東亜共栄圏」という大圏域秩序の形成が目指されていたのだ。
失われる「主権国家」
現在、新保守主義化されていくネオリベラリズムのグローバル資本主義は、民主主義国による統一された世界を生み出すどころか、むしろグローバルなレベルで戦争を激化させている。だが、これらの紛争は、かつての「冷戦」時代の二極体制のもとで生じた「代理戦争「などではない。近年の世界情勢は、米国のネオナショナリズムの敗北と低下により、混沌とした様相を呈している。資本主義世界システムにおいて、「主権国家」が完全に機能不全に陥っている。
「国家」資本主義がとも言えるものが台頭している背景には、産業利潤に依拠した資本の蓄積体制から、資源の収奪体制へ移行しようとしている。もはや国家暴力の直接的な行使は、階級闘争を鎮圧するといったものではなくなり、レアメタルやシェールオイルなど天然資源の採掘や取得を通じ、社会的労働や生産力(協業)から強制的に富を捕獲する道具になっている。天然資源や土地(あるいはプラットホーム)の排他的所有を通じた暴力的収奪が、国家権力、国家暴力と絡み合いながら、ますます資本の権力を構成するようになっている。
いよいよネオリベラリズムへの悲鳴が、聞こえてくるではないか。アメリカをはじめ、社会の分裂と自死者の悲鳴である。(嘉直)(つづく)
