布施祐人さん

「ミナト神戸を戦争に使うな!」と集会が開かれ、150人が集まった(布施祐人さん講演会、3月15日、神戸市内)。布施さんは、「沖縄・西日本各地で進む戦争準備と神戸港の役割」を講演し質疑応答があった。講演のあと、粟原富夫さん(神戸市議)、藤丸徹さん(元海員組合)、市民デモHYОGО、「戦争とめよう!」4・19実行委、「自衛隊申し入れ行動」からアピールや発言が行われた。
〔布施祐仁さん講演要旨〕
この3カ月、衆議院総選挙、アメリカのベネゼエラ侵攻があり、イラン攻撃など激動の世界情勢となっている。今日の未明、トランプ大統領がSNSで「ホルムズ海峡を通り石油を手に入れている国は、タンカー防衛のために軍隊を出せ」と言った。日本に入る石油の95%はホルムズ海峡を通る。アメリカは、自衛隊派遣を言ってくるかもしれない。高市首相は「ノー」と言えるのか、憂慮すべき事態が生まれている。
トランプ政権の「国家安全保障戦略」(昨年12月)は、「われわれは第一列島線全域における侵略を阻止できる軍事力を構築する(台湾侵攻抑止が最優先)。しかし、米軍が単独でこれを担うことはできず、また担うべきでない。同盟国は、集団防衛のため支出を増やすだけでなく、行動でもはるかに多くの貢献をしなければならない」「米国の外交努力は、第一列島線(注①)の同盟国・パートナーに対し、米軍が港湾その他の施設をより自由に利用できるようにすること、自国の防衛費を増やすこと。最も重要なのは侵略を阻止する能力への投資を促すことに焦点を当てるべき」としている。

ミサイル配備は住民守らない
現代の戦争はミサイルとドローン、人工衛星によって行なわれる。南西諸島のミサイル配備、先島諸島からの「住民避難」計画(軍隊が自由に島を使用するため。住民を守るためではない)、日本全国にミサイルを貯蔵する火薬庫も増設するなどを描いている。京都・陸自祝園分屯地に14棟建設されているが、高速道路を使い、自衛隊の阪神基地・神戸港からの輸送なども想定している。「自衛隊員の定員割れ」という問題もある。自衛隊の充足率は、現在60%であり、不足している。アウトソーシングで「民間を動員しよう」としている(医療・設備・修理、補修など)。その先に、徴兵制も考えている。
高市政権による「防衛力強化」。今後、防衛費の大幅な増額(アメリカは、GNP比3.5%(35兆円)を要求している。・各種ミサイルの開発、調整、ドローンの大量調達、・垂直ミサイル発射装置を搭載する原子力潜水艦の保有、・継戦能力の強化(司令部の地下化、弾薬や燃料の備蓄増、衛生機能の強化など)。・防衛産業の強化(防衛産業を成長産業へ)、・武器輸出の推進(「5類型」の規制撤廃)。・非核3原則の見直し、・憲法9条の改定も狙っている。

高市軍拡は「亡国の道」
高市軍拡は、「亡国の道」である。台湾有事をめぐる首相発言により、日中関係は最悪の状況になっている。これら状況下で米国の要求に従い軍拡が進めば、中国は「台湾有事」に介入するための軍拡と捉え、対抗してくるのは必至だ。軍事的緊張が高まり、偶発的な軍事衝突の危険も高まる。アメリカに「梯子を外される」可能性もある。最悪の場合、日本が単独で中国と戦う状況も…。戦争にならなかったとしても、防衛増税と社会保障費カットにより、国民の暮らしが破綻する危険が大きい。アメリカと日本の、一部の軍需企業だけが得をする、国民にとって最悪の状況になる。
アメリカに踊らされずに自立したか外交を。対米従属から脱却しなければ日本の未来はない。大国に頼らない自立した安全保障には、二つの選択肢がある。一つは、自主防衛の強化。もう一つは、地域の安全保障環境を改善すること(緊張緩和・信頼醸成)、友好協力関係の構築による安全保障だ。後者を進めてきたのがASEAN、ASEAN地域フォーラムや、東南アジア首脳会議など。それらは、対話と協力による信頼醸成、紛争予防に力を入れてきた。日本も、そこに軸足を移していくべき…。

大国は「法の支配」を守れ
質疑では、布施さんは次のように答えた。「グローバルサウスの諸国がいちばん求めているのは『法の支配を守れ』ということ」「世界中の国々が大国に対して、小さい国々は力で対抗することは無理、小さい国は二つの選択肢がある。一つは、大国と同盟してやっていくやり方」「もう一つは力で対抗できないから外交、経済、文化の交流を通じ、信頼と相互依存関係をつくる」…。そういう中、後者を選択している国が多数である。前者を選択すると、大国・アメリカと同盟関係をつくり、戦争に巻き込まれ攻撃される可能性が高い。国の自主性が問われる。だから後者を選択している国が多い。ASEANはベトナム戦争後、国の制度は違っても認めあっていく、少なくとも戦争だけはしない関係をつくっていくことを目指している。
アメリカは、グローバルサウスの経済成長の中で力を失くしている。だから西半球だけは支配の維持をはかり、大国・中国との関係も良くしたいと思っている。アメリカに追従するのは、やめろと言っている。私たちの選択肢は、アメリカに追従するか、中国に追従するしかないのか。世界は、大国が支配するものではない。かつては、アメリカは世界のGNPの半分を占めていた。今はG7が占める割合は、40%に過ぎない。インドネシアが日本を追い抜こうとしているし、G20の時代に入っており、世界は多極化している。

「強さ」=「安全」ではない
多極化は世界を無秩序する危険性があるが、一方で諸国が連携できれば大国・アメリカの好き勝手にできない関係をつくっていくことができる。中国、韓国、日本、東南アジアの国々が連携し、共存・共栄の関係をつくっていく可能性がある。また、朝鮮民主主義人民共和国との関係でも、「朝鮮戦争を終結させる」必要がある。アジアの問題に、冷戦構造が残っていること、朝鮮半島、台湾海峡もそうである。その関係を乗りこえていく、協調していくことが大事である。
私は、今の状況をそんなに悲観はしていない。高市首相をはじめ「強さ」をアピールすれば「ウケる」という風潮がある。しかし冷静に考えれば、「強さ」イコール「安全」ではないことがわかる。日本がどんなに軍拡をしても、中国も軍拡していくから「安全」ではない。平和と安全の問題についても、一つ一つ丁寧に議論していく、排外主義とも草の根でたたかっていくことが重要だ。

「非核神戸方式」守る
粟原富夫さん(神戸市議)は、「非核神戸方式を守りたいという思いで発言する。神戸港は戦前・戦後を通し軍港だった。ベトナム戦争時、神戸港は戦死した米兵が運ばれ冷凍保存されたり、武器を積み込んだりしていた。しかし、1974~75年に米兵が完全に撤退した。その背景に、市民の署名運動、請願運動をはじめとした運動、たたかいがあった。「核を積んだ艦船は入港させない」という当時の宮崎市長のもと、自治体決議をかちとった。その非核神戸方式が、いま破られようとしている。全国各地で「特定港湾、特定空港」が指定されている。私たちは、港湾の管理権をもつ神戸市、非核神戸方式を、みんなの力で守っていきたい」と話した。
元海員組合の藤丸徹さんは、「1980年代まで神戸港は、荷役取扱量が世界4位の港だった。なぜか。単に天然の良港というだけではない。神戸港は阪神工業地帯、瀬戸内工業地帯を抱え、海事クラスター(海運業、造船業などの多様な産業が一つの地域に密集している)が完備し、川重、三菱もある。さらに休養地としての有馬、宝塚もあり、魅力的な街。しかし、神戸港は阪神淡路大震災により一時閉鎖され、産業が空洞化するなか、世界4位から2025年には75位まで落ちている。神戸港は、軍事・海軍にとっても魅力的である。1999年に周辺事態法が成立し、米軍は全国の港湾を調査した。当時、私は会員組合の副支部長をしており、アメリカ領事館と話し合いを持った。アメリカは「神戸港の経済発展に寄与したい」と申し入れてきた。さらに「米軍艦船が非核証明書(注②)なしに、自由に入ることを認めてほしい」と言ってきた。海員組合は、どちらかといえば「右側」、反米でも反政府でもない組合。しかし、「全市会議員と、神戸市民が守っている非核神戸方式を破ることはできない」と断った経緯がある。神戸港を「平和の港」として守っていきましょう」と訴えた。

市民が行動するとき
市民団体から、「憲法を守れ、神戸港の軍事利用に反対する」「4・19大阪反戦集会」「祝園、舞鶴にミサイルはいならない」「5・31トマホーク配備反対!舞鶴5000人ヒューマンチェーン、ぜひ参加を」「自衛隊は、戦場に行く」「祝園基地から神戸港にミサイルを運ぶな」「神戸港の軍事利用に反対する賛同署名を集めたい」などと呼びかけがあった。市民が立ち上がって行動するときだ。(庄)
*布施祐仁さん/ジャーナリスト、著作『日米同盟・最後のリスク』(創元社)、『従属の代償 日米軍事一体化の真実』(講談社現代新書)など。
*(注①)第一列島線 中国封じ込め政策。九州・沖縄から台湾、フィリピンの結ぶ軍事的な防衛ライン。 (注②)非核神戸方式 戦後神戸港は米軍占領下にあり、朝鮮、ベトナム戦争など米第7艦隊の艦艇多数が入港していた。1974年、ラロック元米海軍提督の証言「日本に寄港する艦船は核をはずさない」に対し、旧社会党市議が当時の市長(革新系)に質問、「核搭載艦船は神戸港には入港させない」との答弁を引き出した。翌年3月の市議会本会議で「核搭載艦船の神戸港入港拒否決議」が全会一致!(重い)可決され、今日に至る。
*写真=神戸港に入港できなかった、米ミサイル巡洋艦ビンセンス。