
文部科学省が2026年に公表した「『教師不足』に関する実態調査」によると、全国の公立学校における非正規教員の割合は17.82%であった。およそ5~6人に1人が「非正規」の教員ということになる。なぜ公立学校の非正規化が、これほどまで急激に進んできたのか。その背景には、教員の雇用をめぐる制度的・構造的な変化がある。
最も大きかったのは、2004~2006年にかけて進められた小泉内閣の「三位一体改革」だ。「国庫補助負担金改革」「税源移譲」「地方交付税の見直し」の三つを一体として進められたこの改革では、「4兆円分程度の国庫補助負担金の廃止・縮減」が方針として掲げられ、その標的とされたのが義務教育費国庫負担金であった。
「小泉改革」で自治体に押し付け
それ以前は、公立学校教員の給与は、国と都道府県が2分の1ずつ負担していたが、国の負担割合が3分の1に減らされた。残りの3分の2は、地方交付税交付金や税源移譲によって賄われるという理屈だが、実際にその財源が保障されるわけではない。結果として各自治体の教育財政の基盤は、極めて脆弱なものとなった。
正規教員の長期的採用計画を立てるのは、どの自治体にとっても容易なものではない。20代前半の教員を採用すれば、40年近くにもわたって雇用することになるが、その頃にどのくらいの数の学齢児童生徒がいるか、予測するのが難しいからだ。もし、急激な少子化によって教員が余るようなことがあっても、正規教員をリストラすることはできない。そのため一定数を非正規で雇い、いざという時のための「調整弁」としている側面がある。そして多くの自治体が、非正規教員の割合を増やし始めた。

多くの自治体が「非正規」化へ
小泉改革の暴挙は、これにとどまらない。2004度に、義務教育費国庫負担制度に導入された「総額裁量制」だ。国が支払う負担金の総額を超えない範囲で、各都道府県や政令指定都市が給与額や教員配置を自由に決められるというものだ。それ以前は、公立学校教員の給与は国立学校教員の給与額に準拠され、どの自治体もほぼ変わりはなかった。しかし、この仕組みが改められ、各自治体が教員の給与額を自由に設定できるようになった。その結果、多くの自治体が教員の給与を削減し、浮いた財源で教員の数を増やし、少人数学級や特別支援学級を設置するようになったのだ。これにより、非正規教員が激増することとなった。
これに先立ち、2001年に義務標準法改悪、通称「定数崩し」が行なわれた。現状、日本の公立学校は、小学校が35~40人に1学級、中学校と高校が40人に1学級で編制される。この計算式をベースに教員数が算出され、国の負担額(義務教育費国庫負担金)が決まる。この負担額は従前、常勤の職員にしか使えなかったが、担当授業のみ受け持つ非常勤講師を含めてよいことにした。例えば、正規教員1人分の授業を3人の非常勤講師で分割して受け持つような場合も、教員の給与額の一部を国が負担してくれるようになったのだ。その結果、多くの自治体が非正規教員を増やすことになった。
拡大する「教師不足」
このように、2000年代前半から進められた「三位一体改革」「総額裁量制」「定数崩し」の三つの政策により、非正規教員は増え続けてきた。昨今、教育界では教師不足が大きな問題になっている。実はその元凶ともいえるのが、この非正規率の高さだ。これまで「調整弁」となっていた低賃金の非正規教員自体が減少し、正規教員の穴埋めをできない状況に陥っている。教員不足の解決には、公立学校教員の非正規化に歯止めをかけることに加え、非正規教員の給与増および待遇改善が強く求められる。(安芸一夫)
