
6月14日〜15日、沖縄で日本郵政グルーブ労働組合(JP労組)の定期大会が開かれる。そこで注目を集めているのが夏期冬期休暇削減である。
日本郵政グループ各社(郵政)では、正社員に対して、年休とは別に1年のうち夏期と冬期に3日ずつ、計6日間の有給休暇が付与されている。労働契約法20条裁判一審判決後の2018年10月以降、アソシエイト社員(期間雇用から無期雇用に転換した非正規労働者)にも、年間1日ずつ計2日付与されるようになったが、期間雇用社員には現在も付与されていない。20年10月、労契法20条裁判最高裁判決により、各種手当、休暇について「正規、非正規間の格差は不合理、違法」と認定された。夏期冬期休暇もその中に含まれていた。
郵政は最高裁判決を受け違法状態からの改善を求められていたが、21年9月「労働条件の見直しに関する基本的な考え方」を公表、内容は基本的に正社員の労働条件引き下げによって格差を埋めようとする、極めて不当なものだった。問題は、その直後、会社方針と同様というには生ぬるいほど、より激しい正社員の労働条件切り下げによる低位格差是正方針をJP労組が打ち出したことだった(本紙331号、及びWEB版記事参照)。
労契法20条裁判を取り組んだ郵政産業労働者ユニオン(郵政ユニオン)は、郵政とJP労組によるこうした欺瞞的な格差是正方針を全面的に批判する宣伝活動を展開、JP労組の現場組合員からも大きな批判があがる中、この方針は22春闘の中で病気休暇に関しては本当の格差是正に繋がる再回答(不十分な面はあるが)を引き出し、夏期冬期休暇に関しては持ち越しと整理された。そして、今回あらためて夏期冬期休暇削減をJP労組大会が認めるのかどうかとなったのである。
朝日新聞は5月24日、「日本郵政 非正規と有休格差是正 正社員待遇下げ容認…JP労組」との見出しで、JP労組がすでに決定済みであるかのような記事を掲載した。正社員の休暇は年6日を4日削減、2日にするが、まったくなかった期間雇用社員にも夏期冬期休暇を年1日ずつ2日間付与するとの内容なので格差是正と打ち出されたが、格差是正と言うなら本来現状の6日間、全ての社員に付与されねばならなかった。
この記事はyahooニュースにも転載され「どこが格差是正なのか」など多くの批判にさらされている。職場でも話題になり、JP労組の支部役員(兵庫県下)が「大会がまだ終わってないのに何なんだ、このニュースは…」と、JP労組本部によるリークのタイミングと、そのまま掲載した朝日新聞への怒りを滲ませていた。実際、JP労組近畿地本はこの方針に反対を表明している。こうした怒りの声は、現場組合員がまだ諦めていないことを示している。
23春闘、郵政は昨年までの7年連続ベアゼロの上にわずかな賃上げを回答、JP労組もすぐに妥結した。それに関する報道は「ベア5.11%」「民営化後最大の賃上げ」などと持ち上げられたが、その実態はわずか1000円の賃上げでしかなく、非正規への賃上げは無しであった。
郵政ユニオンは再回答を求めて各地でストライキに立ち上がった。23春闘のこの回答は賃上げ額の安さ以上に大きな問題をはらんでいた。賃上げの原資に、上記の夏期冬期休暇削減分を充てるとしていたからである。JP労組はそれをすぐに飲んだ上で、しかし組合員の反発をかわすために「休暇削減を決めるのは定期大会」としていたのである。そういう意味では朝日新聞の報道は遅すぎるぐらいで、夏期冬期休暇削減についてJP労組は端から認めていたのだ。さらに言えば昨年22春闘時のJP労組討議資料には、夏期冬期休暇全廃案までうちだしていたのである。
23万4千人もの組合員を擁するJP労組。しかし今、こうした問題が決められようといていることをまったく知らない組合員も少なくない。曲がりなりにも組合活動が見える支部、分会では当然周知されて反対の声もあがっているが、いまだ「何それ」という声も聞こえる。報道で初めてこの方針を知り、JP労組を脱退する、脱退したとの話も伝わっている。脱退者はユニオンなどに加盟して闘いたいというのではなく、費用対効果を考えての脱退を公言しているそうだ。「組合やめて組合費払わなくて良くなった。その分賃上げになった」という声を実際聞いた。
官製春闘と言われて久しい。23春闘でも、ユニクロやイオンが非正規の待遇を進んで改善したかのようなニュースが目立った。労働力確保のためなど雇い主の都合だけでわずかに労働条件が上がったり上がらなかったり、多くの労働者が受身に立たされてるかのように見える。しかし小規模ながら様々な現場でストライキで闘った報告も聞こえてくる。ABCマートでは、たった一人の非正規の労働者が他職場の労働者、活動家の支援を受けてストライキを打ち抜き、非正規5000人全員の6%賃上げを勝ち取ったという記事もあった。業務を完全に止めるようなストでなくとも、たった一人でも闘うことがどれほど力強いことかと感動した。
郵政職場で労働組合の意義も感じられずに自分だけ少しだけでも出費を減らし、ギリギリ生き延びたいと思わざるを得ない労働者に、労働組合の闘いの息吹を何とか伝えたい。労働組合自ら労働条件引き下げに進むような状況に、1人でも多くの怒りの声をぎりぎりまで集めたいと思う。(浅田洋二)

JP労組大会速報。代議員定数は456。1号議案(夏期冬期休暇削減含む)、投票数455、賛成327、反対128で承認とのこと。まあそんなものか。まだまだ休みが減らされることを知らないというか、議案書すら手にしていない組合員も少なからずいたらしいし。
その上で、JP労組結成以降この反対票128はおそらく最も多い反対票。反対票いれた代議員、及びその代議員が所属する支部はこのまま引き下がらずに闘って欲しい。
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