
リトアニアで開催されたNATO首脳会議でバイデン米大統領はその演説の冒頭、隣に立っていた岸田首相のことを指して、「欧州でも米国でも、彼が立ち上がり、ウクライナを支援し、日本の防衛費を増額すると思っていた人はほとんどいなかったと思う」と述べ、「彼は日本を強化した」と称賛した(12日)。
バイデンはこれまでにも同様の発言を行ってきた。先月20日には米国内の演説会で、「日本の軍事費を対GDP費2%」に引き上げるように「岸田首相を説得したのは自分だ」と自慢した。その後、日本政府が抗議したためこの発言は訂正したが、議事録は残っている。
一連のバイデン発言は、「敵基地攻撃能力の保有」や「軍事費を5年間43兆円」が米国の意向を丸飲みしたものであることを確証した。岸田首相は「安倍晋三越え」に執着しているようだが、それは安倍元首相以上に米国の言いなりになることだったのだ。
「5年間で43兆円」という大軍拡の財源は増税以外にないことは明らかだが、政府はその時期や規模について明らかにしていない。現在の衆議院議員が任期満了となる25年以降に先延ばしする構えだ。こうした一時しのぎで乗り切れると本気で考えているのだろうか。
国民全体の所得に占める税金と社会保障費の負担の割合を表す国民負担率は、22年度で47・5%にのぼっている。財政赤字を加えた潜在的な負担率は61・1%だ。これに物価高騰が襲いかかっている。多くの人が「ガマンの限界」を感じ始めている。それは内閣支持率の急落に表れている。いったい誰が米国の戦争のための増税に応じるというのか。 (香月泰)
