ある朝の訪れ   
        渡辺信雄
深い谷間に落ち込んだ
心の断層の底には
澱んだ水と清らかな水の流れ。
ときおり水面が揺れ渦巻いて。
そこに何が棲んでいるのか
虎か馬か怪物か
君は突然に過去の記憶に動かされ
怒りの皿を 投げつける。
割れた欠片を拾うのは君なのに
目覚めると トトントントトン…
包丁で叩く音のリズム、
マナ板で 野菜が刻まれ
久しぶりに朝の平穏が
奇蹟のように訪れて