
大阪では維新の会が根強い支持層を維持しており、その勢力は各地に拡大を続けている。こうした「維新」現象の背景にあるのは何か。そしてその対抗軸になりうるものは。多くの人が関心をもつこのテーマについて、龍谷大学教授の村澤真保呂さんが講演した(12月2日、ミュニシパリズム京都主催)。
村澤さんが「日本維新の会」が支持される背景と、これを支える思想的・社会的基盤を分析して、その対抗軸としてあげたのがミュニシパリズム(住民自治)である。村澤さんは自身の地域活動の経験を紹介しながらその理由を説明した。
実のところ「維新の会」には思想や理念の一貫性はない。あるのは場当たり的で扇情的な言動だけだ。これまで地方議員の役割は、特定の地域コミュニティや業界団体の代理人だった。ところが「維新の会」の議員は、不特定多数の市民を対象にしており、具体的な地域生活の課題とは無縁だ。維新の支持者は、「利益誘導型」政治の恩恵にあずかれない層であり、労働組合・宗教団体などの「中間団体」とも無縁な層である。
大阪では1980年代のバブル期を挟んで、地域の政治的共同体の弱体化と崩壊が進んだ。商店街、町工場、自治会が衰退する一方でコンビニ・ショッピングモールなどに置き換わり、地域共同体とは無縁な「個」が増加した。
80年代以降、マーケティング技術が発展し、2000年代に入ると、広告代理店やマーケティング会社が、政策のコンサルティングに進出してきた。金融資本の経営コンサルタントだったマッキンゼー・アンド・カンパニー(アメリカに本社を置く大手コンサルティング会社)は80年代から途上国の行政に介入していたが、00年代には先進国の行政にも関わりはじめ、今やほとんどの国の政府に入り込んでいる。「維新の会」のブレーンは、マッキンゼーにいた上山信一(現・慶應義塾大学総合政策学部教授)だ。上山は現在、「都民ファースト」のブレーンでもある。
その政策思想が、「新しい公共経営」と言われる「ニュー・パブリック・マネージメントNPM」である。(塚本)
