
1月16日、市民連合高槻・島本が主催した元高槻市議会議員の二木洋子さんの講演会に参加した。大阪の政治状況として「維新支配の現実」を全面展開され、多くを学ぶことができた。私自身の意見や感想も加えて紹介したい。なお万博・IRカジノ問題は今年最大の決戦だが、すでに語られているので省略する。(想田ひろこ)
極端な小選挙区制
まずこの3年間の選挙における大阪の状況を見てみると、2021年総選挙では、維新は比例区で43%(171万票)を獲得している。次に22年参院選でも38・8%(145万票)を獲得し、議員定数4のところ維新が2(その他は自民1、公明1)となった。23年の統一地方選挙(地方自治体議員)では大阪府・市の両議会で断トツの過半数を獲得した。府では定数79のところ55(70%)。市では定数81のところ46(56%)を獲得、もはや「何でもできる勢力」に登りつめた。
何故、維新はこれ程に選挙に強いのか。彼等のスローガン「身を切る改革」や「成長戦略」はそれ程までに住民にとって魅力的なのか。その欺瞞が見抜けないのかと、かねてから疑問であったが、今回の講演で理解することができた。
「身を切る改革」と言いながら議員定数を削減する一方で、選挙区数はやたらに多い。議員定数を人口の多い他の自治体で比較してみる。東京都は127、神奈川県は105、大阪府より人口の少ない愛知県でも102、近隣する兵庫県で89である。それに比して大阪府は79しかない。議員定数は民主主義の重要なファクターであるが、大阪府議の少なさは異常である。
次に選挙区数を見てみると、東京都42、神奈川県48、愛知県55、兵庫県38。ところが大阪府の選挙区は53もある。東京都よりもはるかに多い。つまり極端な小選挙区制が敷かれているのだ。それは1人区の多さに示されている。1人区は東京都7、神奈川県15、愛知県25、兵庫県17、そして大阪はなんと36である。
どれだけ維新が大阪において少数意見を切り捨て、多様性を排除し、議会制民主主義を踏みにじっているのかが明白である。そして維新のこの戦略は府下の市議会でも貫かれており、一例をあげれば、高槻市の人口は34万7000人で議員定数が34人だが、ほぼ人口が類似する東京の中野区(34万3000人)では定数42人である。吹田市、枚方市、豊中市と維新が第一会派の市は全て議員定数が削減されている。
以上が維新の独裁を可能にしたカラクリだ。
大阪経済は成長したか
「経済成長が鈍って首都圏にどんどん差をつけられている」という認識は大阪府民の多くが持っているだろう。維新はここにつけこんだ。維新の綱領の理念や活動方針を見てみたが、経済成長の特別な戦略など見当たる訳ではなく、自民党などの「トリクルダウン論」と違いはない。
その破綻の突破口として苦し紛れに出してきたのが、関西万博であり、G20サミット、IRカジノかと思えてならない。「民営化やパークマネジメント、民間活力導入などで経営効率を上げた結果、ビッグプロジェクト誘致に成功した」と維新は自画自賛しているが、1年後が楽しみである。夢洲は見事に破綻に向かっている。講師の二木さんが夢洲に調査に行かれた際、工事作業中の労働者に万博開会に向けた進捗を尋ねると、「ああ無理、無理」と鼻で笑っていたらしい。
大阪の経済成長を「数字」で見ていこう。
大阪府の人口は00年に880万人、20年に883万人と20年でほぼ増減なしであるが、神奈川県では849万人から923万人へと74万人も増加し、「日本第二位」を大阪府は神奈川県に譲っている。もちろん人口の多さがそのまま経済成長を示すわけではないが、「1人当たりの県民所得」の変化を人口の多い府県で見ていきたい。06年から18年の12年間に、全国では県民所得が103・33%増加している。神奈川県では100・65%微増、愛知県では100・00%変化なし、福岡県では107・41%増加、それに比べ大阪は98・43%と減少、つまり他県に比べて大阪府民は貧しくなっているのか。
経済の活性化を、この20年(01年~21年)の上場企業の本社数の増減で見ると、神奈川県が97%の微減、愛知県は101%の微増、福岡県が111%の増加、そして大阪府は87%の顕著な減少である。大企業本社が他県に移転したのか、それとも倒産したのかは分からない。これらの指標だけで全てを語ることはできないが、大阪経済が縮小に向かっていることは確か。
企業が去っていく(つぶれていく)地域の住民が豊かになるはずがない。維新はこの現実をどう説明するのか。大阪は昔から「中小企業のまち」と言われてきた。大企業に働く労働者よりも中小零細企業に従事する住民の方がはるかに多い。そのようなところにこそ行政が支援し、雇用を守り、経済を充実させる庶民の立場に立った府政こそが求められている。それは断じて万博・カジノではない。(つづく)
