ネオリベの政策思想

村澤真保呂さん(龍谷大教授)によれば、新しい公共経営(ニュー・パブリック・マネージメント/NPM)が日本で最初に導入されたのは98年、三重県の「さわやか運動」だったという。その後それは、急速に全国に広がっていった。
NPMでは、自治体は企業に、首長は社長に、市民を株主になぞえらえる。その政策思想にあるのは合理化・トップダウン・組織のフラット化・民営化だけであり、議会も憲法も民主主義もない。現在ほとんどの行政機構はNPM理論を採用しており、大学の「政策学部」ブームもその反映だ。NPO/ボランティア法も、NPMとセットである。市民は「株主」であると同時に「無償労働者」とされる。
大阪のような大都市だけでなく、地域共同体が衰退し人口減少が進み、予算にも苦しむ農村部や地方都市の自治体に、維新はハイエナのように広がっている。他方で、人口が増加し、予算が豊富で福祉政策が充実している明石市や伊丹市のような自治体では「維新」の影響力は小さい。維新の躍進は、社会の構造的変化の結果であり、原因ではない。

住民が政治の主体に

維新に対抗するには、この原因に対処することだ。21世紀に入って欧米各国で、格差拡大や公共性の崩壊に対抗する様々な市民運動が合流し、ミュニシパリズムと呼ばれるようになった。ミュニシバリズムとは、地域住民の自発的かつ直接的な行動により自治をおこなう運動だ。こうした地域共同体の再構築が問われている。
村澤さんがかかわっている滋賀県大津市の「日吉台まちづくりカンパニー」は、幼稚園廃園攻撃をきっかけに発足した運動。当時この攻撃を仕掛けたのは、民主党が応援した市長だった。反対したのは共産党と自民党で、両党の共闘が成立しないなかで住民が独自の市会議員を擁立することになった。住民が推した市会議員はすでに二期、上位で当選している。
地域の持続可能性に踏まえて、必要な政策を検討していけば、「維新」に対抗する道は自ずと開かれるのだ。(塚本)