杉田水脈の議員辞職を求めて行われたフラワーデモ=2020年10月5日、東京:OurPlanet-TVのウェブサイトより転載

3月17日、大阪市内で、「女性・マイノリティへのヘイトスピーチを許さない社会を」と題する集会が開かれ、80人が参加しました。主催は日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク(関西ネット)。集会では「杉田水脈(みお)議員の『慰安婦』歴史否定発言と差別扇動を問う」をテーマに性暴力を取材しているライターの小川たまかさんが講演、杉田のヘイト攻撃と闘ってきた3人から話がありました。

「いいね訴訟」

小川たまかさんは、伊藤詩織さんの「いいね訴訟」(注1)、20年9月の「女性はいくらでもうそをつける」発言に端を発し、総務省政務官となった杉田の辞任を求める「13万筆署名」運動、杉田によるフェミニズム研究への攻撃とそれへのたたかいなどを取材して、感じたことを報告。「杉田議員の差別言動は山のようにある。一つひとつが理不尽なものだが、自民党の対応はまったくおかしい。杉田がやっているのは、『敵』を指さして人びとをあおる『犬笛』(注2)と呼ばれる行為だ。私たちは指された人の側に立とう」と結びました。

アイヌ・在日ヘイト

杉田は16年2月の国連女子差別撤廃条約委員会(CEDAW)に、日米の右翼団体とともに乗り込んで、NGOとして参加していたアイヌ民族や在日朝鮮人の女性たちにたいして、SNSで盗撮した映像とともに差別暴言を発信しています。その当事者の2人の方からアピールがありました。
アイヌ民族の「メノコモシモシ代表」の多原良子さんは、法務局への人権侵害救済とSNSの削除要請を申し立てました。1日に2時間以上も事情聴取を受け、9カ月もかかってやっと人権侵害が認められましたが、その内容は、「アイヌ文化を学び、発言に注意するよう啓発をおこなった」と言うものに過ぎませんでした。
杉田は、問題が大きくなったことによって政務次官を更迭されましたが、まったく反省していません。多原さんは「今でも日本会議や桜チャンネルで自分が被害者であるかのようにふるまっている」と怒りをあらわにしました。そして、日本のえぞ蝦夷地侵略の歴史、アイヌ民族への迫害、中でも女性にたいする差別迫害の歴史について「日本人がもっと知るべきだ」と指摘しました。
在日3世のAさんは、「CEDAWに来た杉田らがひどいヘイトスピーチを繰り返していたのには本当にびっくりした」とのこと。「日本政府は国連から何度も勧告を受けているのに変わりません。歴史の意図的な否定やわい小化を許さない取り組みが必要です。CEDAWの第9回政府報告書の審査(2024年10月)にどう臨むかが課題です。ともにがんばっていきましょう」と話されました。

フェミ科研費裁判

3人目のゲストはフェミ科研費裁判弁護団の上瀧(こうたき)浩子弁護士。一審判決は特にひどかったが、二審でも一部勝訴とはいえ判決文で「杉田の意見も一つの意見」とする裁判所の歴史認識の低さと学問研究の意味を全く理解していないことを強く批判しました。そして今後は、裁判にエネルギーを使うよりも、研究者として社会に向けて発信することに力をそそごうと上告しなかった理由も語ってくれました。
関西ネットは「杉田のフォロワーは今も35万人、侮ってはならない。ジェンダーバッシング、人種差別と排外主義で社会を分断支配する動きに、マイノリティの女性をはじめ、抑圧されているものが連帯してたたかおう」と訴え、岸田首相宛の抗議文を採択しました。    (村野良子)
(注1)杉田が伊藤詩織さんを誹謗(ひぼう)中傷するツイートに、25回「いいね」を押したことを、伊藤さんが名誉毀損として告訴。今年2月最高裁で勝訴確定
(注2)犬笛 政治家などが特定の支持層にしか分からない言い回しを用いて、思考や行動を操作すること。