ユン政権は「死に体」

今回の韓国総選挙で、もしも韓国与党の「国民の力」が過半数を獲得していれば、ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権の独走は間違いなく続きました。しかし与党が惨敗し、野党が圧勝しました。その結果、ユン政権は任期3年を残して、「死に体」化しようとしています。
まず今回の総選挙の結果によって日韓関係がどうなるのか。私は大きく変わらないと思います。総選挙惨敗の責任を取って、大統領室の大統領秘書室長や首席秘書官の全員が辞表を出しました。また内閣の国務総理も辞表を出しました。ところが唯一、大統領室の国家安全保障室(国家安保室)だけは辞表を出しませんでした。
韓国の外交・安保政策のコントールタワーは、実はこの国家安保室なのです。韓国の外交省・国防省・統一省は国家安保室の下で外交・安保政策を担っているのです。その国家安保室だけが辞表を出さなかった。それはユン政権のこれまでの対米・対日政策を継続するという意思の表れと見るべきでしょう。

対日政策に変更なし

また、韓国は大統領制ですので、国会で野党が多数を獲得したからといって政権交代が実現するわけではありません。韓国では3年後に大統領選挙がおこなわれます。その結果が日韓関係に大きな影響を与えると思いますが、その前に、日韓関係はもちろん、韓米関係、日米関係に大きな影響を与えるのが、今年11月に予定されている米大統領選挙です。
今や「ほぼトランプが勝つのではないか」と見込まれているようですが、トランプが勝った場合の東アジア政策はどうなるのか。トランプが大統領に選出されれば、今度で2期目となりますので、その後は大統領選挙に出ることはできません。そうなるとトランプが狙うのは当然、ノーベル平和賞だと思います。そのために、ウクライナ戦争を早期に終らせようとするでしょう。
東アジアでは中国経済にたいするデカップリング(分断)を進めていくでしょう。北朝鮮政策はどうなるでしょうか。前回のトランプ政権のときは、北朝鮮に「非核化」を要求する代わりに米国との国交正常化を提案しました。しかし、トランプ選挙キャンプの元政府高官の発言を見ると、トランプが勝っても北朝鮮と非核化交渉をする意思はないようです。ということは、次期トランプ政権が実現すれば、その北朝鮮政策は、「非核化」でなくて「核管理」に変更される可能性が高い。それは「北朝鮮の核を認める」ということです。

「もしトラ」で核ドミノ

同じくトランプ選挙キャンプの元高官は、「韓国の核武装を認める」という発言をしています。米国が北朝鮮の核保有を一定の限度内で認めることになれば、当然、韓国で独自の核武装論が台頭します。それを見越した上で、「韓国の核武装を認める」という発言につながっているのです。もしトランプ政権が誕生した場合の東アジアにおける最悪のシナリオは、韓国の核武装化という「核ドミノ現象」が現実のものとなることです。これが今後の情勢を占ううえで最も重要な変数ではないかと思います。(つづく)