今年の公立高校入試で多数の定員割れが生じた大阪府=写真は大阪府庁の正面玄関

今春、大阪府の公立高校入試で「定員割れ」が70校に上るという異常事態が起こり、在阪マスコミは「大阪府の高校完全無償化で、私立高校に受験生が流れたのでは」と報じました。
このような異常事態の原因は維新の「教育改革」にあります。2012年に橋下徹氏が府知事に就任して以来、「教育改革」の名の下、「教育の機会均等」や「教育を受ける権利」が奪われています。
大阪府の公立高校は地域に基づいた学区制があり、子どもたちの多くは当たり前に地元の高校を選んでいました。それが高校選択の基本でした。ところが維新府政は、学区制を廃止。その結果、公立高校の序列化が一気に進み、一部の進学校や人気校(その大部分は交通の利便性が高い)に受験生が集中したのです。
それと並行して維新府政は「3年連続して定員割れ又は改革がみられない場合は募集を停止=廃校にする」という条例を制定。意図的に高校に格差をつけ、学校どうしの競争を強制する。こんないびつな教育行政を大阪府民に押し付けたのです。
来年3月に廃校が決定した公立高校の中には、地元で唯一の高校というところもあります。この高校が廃校になれば子どもたちは遠く離れた私立高校に通わなければなりません。この春、この高校には130人も入学しました。この子たちは来年からどうすればいいのでしょうか。親も生徒も様々な点で負担を強いられるのです。
廃校が決まった高校の教育労働者たちは「公立高校は採算が取れなくても、存在に意味がある」と訴えています。この10年で17校も廃校にした大阪府は、こうした現場の声をどのように聞いているのでしょうか。

朝鮮学校は適用除外

「高校の完全無償化」には他にも問題が多くあります。朝鮮高校にはこの無償化が適用されていません。日本が朝鮮半島を植民地化した歴史と日本社会の責任を考えれば、朝鮮高校こそ、真っ先に無償化されるべきです。
また「無償化」は大阪府だけの制度なので、他府県から通学している生徒には適用されないため、府内の親類宅に住民票を異動させたり、大阪府から他府県への高校受験を取りやめたりする生徒も多く、大阪近郊の高校も将来的には存続が危ぶまれるという見方もあるそうです。ところが大阪府の吉村知事は「他府県も無償化を取り入れたら良いでしょう」と教育行政のゆがみを堂々と自慢しています。
維新の教育行政が、府民や将来を担う子どもたちの権利をどれほど奪っているのか。今一度、考えなければなりません。 (高橋けいこ)